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「アクチュアリテ 社会」桜井道子(トリコロル・パリ)

一度は行ってみたい世界遺産、モン・サン・ミッシェル

 2023年最初のコラムは縁起が良さそうなモン・サン・ミッシェルの話題で始めたいと思います。今年は、1023年にロマネスク様式の修道院の建設が始まってから1000周年を迎える記念の年。サン・マロ湾に浮かぶ、高さ80mの岩山の頂上に修道院が築社会かれて以来、カトリックの巡礼地として栄えてきました。さまざまな様式が混ざりあった美しい建築、上から眺める絶景、城壁に囲まれた石畳の入り組んだ小道など、その魅力は尽きません。


朝日を浴びて輝くモン・サン・ミッシェル

 引き潮の時には陸とつながるけれど、満ち潮になると周りを海に囲まれて孤立するというこの島の特徴がその神秘性をより高めていましたが、19世紀に建設された陸と島を結ぶ堤防道路のせいで砂が堆積し、満潮でも完全に孤立した姿を見ることができなくなっていました。10年以上にわたる大規模な工事を経た現在、大潮時には孤島となって浮かぶモン・サン・ミッシェルの姿を再び、拝むことができるようになりました。堤防道路の代わりに橋がかけられ、対岸からのアクセスは徒歩またはシャトルバスのみとなっています。

 モン・サン・ミッシェルは、日本での知名度が非常に高いフランスの観光地と言えると思います。フランスでも風光明媚な場所としてよく知られてはいますが、まだ一度も行ったことがないという人も意外なほど多く、フランス人の知り合いからは、なぜモン・サン・ミッシェルは日本でそこまで有名なのか?と聞かれることがよくあります。純粋に唯一無二の美しい景色だから、ユネスコ世界遺産だから、以前、自動車のCMに登場して話題になったから、など、理由はさまざまあると思いますが、パリから車で4時間はかかる場所に、日帰りツアーで訪れる日本人旅行者も多いと言うと、とても驚かれます。

 ようやく外国からの旅行者が戻ってきた昨年8月は毎日、15000人以上の入場者で賑わいました。8月18日にはなんとたった1日で36000人が訪れ、1980年代以来の新記録となったそうです。オフシーズンである冬季の入場者が1日平均1000~1500人ぐらいだと聞くと、この夏の驚異的な混雑ぶりがよくわかります。コロナ禍以前の2019年には年間250万近い人が訪れたモン・サン・ミッシェルの人気は、まだまだ衰えを知りません。

◇初出=『ふらんす』2023年1月号

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著者略歴

  1. 桜井道子(さくらい・みちこ)(トリコロル・パリ)

    パリとフランスの情報サイト「トリコロル・パリ」を運営。著書『おしゃべりがはずむ フランスの魔法のフレーズ』。

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