さまざまなアートを受容するパリの街
ストラヴィンスキーの『春の祭典』からインスピレーションを得て作 られた噴水。背後にはストリートアート
パリは「芸術の都」とよく呼ばれますが、実際、これは決して大げさではないと思います。美術館や博物館、アートギャラリー、映画館、展覧会、カルチャーイベントの多 さとバラエティの豊かさ、そして何よりも、19世紀半ばに県知事オスマンが行った大改造によって作られた整然とした街並みに、歴史的なモニュメントが点在する、街そのものの美しさもポイントなのですが、個人的にはここに、誰でも無料で自由に見ることができるアーバンアートの存在も加えたいです。
街中にアートのオブジェが数多く設置されているのはもちろん、ストリートアートが多いことも特徴です。公共物に絵を描いたり作品を貼り付けたりするのは違法行為すれすれなので、都市によって寛容度が大きく異なりますが、パリがその点、とてもおおらかなのは少し歩けばすぐにわかり、歴史ある建物の壁にも、さまざまなアーティストの絵やコラージュ、モザイク、ポショワール(型紙で文字やイラストを転写する手法)などが見つかります。
現代美術の殿堂とも言えるポンピドゥー・センターのすぐ南に、イゴール・ストラヴィンスキー広場があります。フランスを代表する現代芸術家の1人、ニキ・ド・サンファルと、その夫でスイス人芸術家のジャン・ティンゲリー夫妻が共同制作した噴水が、1983年ここに完成しました。縦33m、横17mの長方形の大きなスペースに、カラフルな16体の自動人形が配置されています。長らく止まったままでしたが、修復工事を経て昨年11月、ついに復活し、水しぶきをあげながら動く人形の姿を再び楽しめるようになりました。噴水の後ろの壁には、パリ4区とパリ市の肝いりで2010年代に実現した代表的なストリートアーティスト3人の巨大な作品があります。向かって左の巨大な顔はフランスのジェフ・アエロゾル、真ん中はアメリカのシェパード・フェアリー、そして右は、フランスのインベーダーによるモザイクです。さらに、この壁の左手には、16世紀に建設されたサン・メリ教会の後期ゴシック様式の横顔が見えます。お隣のポンピドゥー・センターの独創的な建築も含め、まさに時代を超えてさまざまな芸術が交わるこの広場は、あらゆる形態のアートにオープンな都市、パリを象徴する場所の1つです。