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「アクチュアリテ 社会」桜井道子(トリコロル・パリ)

パリのバゲットコンクール

 毎年4月にパリ市が開催するバゲットコンクールは世界的に注目を集めるイベントです。パリ市内のパン屋さんであれば誰でも参加でき、長さ55~70cm、重さ250~300gのサイズ規定をクリアしたバゲットを提出します。パンの専門家、前年の優勝者、公募で選ばれるパリ市民数名などから構成される審査員が、味、外の焼き加減、中身の見た目、香り、形を審査し、その年の優秀バゲットを10位まで発表します。表彰されるのはお店ではなく、あくまで職人さん個人なのも、職人技へのリスペクトでしょう。最優秀バゲット賞を獲得したパン職人には4000ユーロの賞金のほか、大統領官邸エリゼ宮に1年間バゲットを納める栄誉を与えられます。優勝店にはパリジャンだけでなく外国からの観光客までもが押し寄せる、大きな影響力のあるコンクールです。


店にはバゲットだけでも数種類が並ぶ

 「バゲットbaguette」は、まさにフランスを象徴する食べ物で、この国の食卓には欠かせません。スーパーに行けば何でも買えるけれど、バゲットだけはパン屋さんの焼きたてにこだわる人が多いのは、日本人が「ご飯は炊きたてが一番」と思うのと同じかもしれません。パン屋さんは朝、昼、夕の食事どきに合わせてバゲットを焼くので、そのタイミングなら必ず焼きたてのバゲットを買うことができます。日本ではフランスパンは固くて噛み切れないというイメージがありますが、本来はサクッと噛み切れるくらい新鮮なうちに食べるべきものなのです。

 時代の流れとともに、工場で作られた冷凍パンを店のオーブンで焼くだけのチェーン店が増えてきたなか、職人が手作りするパンの伝統を守る努力も続けられています。小麦粉から生地を作って焼き上げるまでの全工程を店内で行うお店のみが「ブランジュリーboulangerie」の表示を掲げることができると法律で定められているのもそんな取組みのひとつです。

 100年前のフランス人は現在の5倍、60年前は3倍の量のパンを食べていたと言われ、食生活の多様化に伴って、その消費量が減る一方なのも日本のお米と似ています。それでも多くのフランス人にとって今もパンは欠かせない存在であり、フランスが誇る豊かな食文化の大事な要素のひとつであることに変わりはありません。

◇初出=『ふらんす』2020年4月号

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著者略歴

  1. 桜井道子(さくらい・みちこ)(トリコロル・パリ)

    パリとフランスの情報サイト「トリコロル・パリ」を運営。著書『おしゃべりがはずむ フランスの魔法のフレーズ』。

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