幸せな甘い香りに包まれるフランスの2月
1月も終わりに近づくと、フランスのスーパーでは、小麦粉やジャム、砂糖などの商品が目立つように陳列され始めます。それは、2月2日がクレープを焼いて食べる習わしのある「シャンドルール Chandeleur」の日だからです。クリスマスからちょうど40日後で、幼子イエスが初めてエルサレムの神殿で神に捧げられたことを記念する日で、正式には「主の奉献の祝日 Fête de la Présentation de Jésus au Temple」と言います。教会でろうそくの火を灯してお祝いする「聖燭祭」の日でもあることから、ろうそくを意味するchandelleという言葉が「シャンドルールChandeleur」のもとになり、広く使われるようになりました。
2月2日はクレープの日
ローマ教皇がその昔、巡礼者たちにクレープを振舞ったから、イエス・キリストが授けられた光(宗教画でよく描かれる丸い後光)の形に似ているから、など、この日にクレープを食べる理由には諸説ありますが、いずれにしても2月2日は現在、大人も子どもも楽しみな「クレープの日」。クレープ専用のフライパンや生地を伸ばすためのトンボを完備している家庭も多いです。ちなみにクレープを焼くときは左手にコインを握りしめ、右手だけでフライパンを握ってうまくひっくり返せたら、その年はお金に困らないという言い伝えもあります。
2月の甘~い話題、次はバレンタインデーです。2月14日は、フランスでも「聖ヴァランタン Saint Valentin」と呼ばれる特別な日ですが、その過ごし方は日本とは少し異なります。男女を問わず、純粋に「愛する人、大切な人にその思いを形にして伝える日」なので、職場や学校で義理チョコを配ることはあり得ませんし、贈るものもチョコレートに限りません。
香水やコスメ、アクセサリーなど、プレゼントに手ごろな商品が販売されますが、ここ数年、日本の習慣が逆輸入されたような形で、有名なパティシエやショコラティエたちがバレンタイン限定商品を発売するようになったのは嬉しい驚きです。
とはいえバレンタインに贈られるものでおそらく一番多いのは花束でしょう。2月14日の夕方になると、花屋さんの前には行列ができます。花屋さんはその1日だけで、通常の1週間分を売り上げるそうです。花束を抱えた人々が家路を急ぐ姿を見かけると、何とも言えない温かい気持ちになります。
◇初出=『ふらんす』2021年2月号