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「アクチュアリテ 社会」桜井道子(トリコロル・パリ)

フランスの街の風景に欠かせないメリーゴーランド

クリスマスシーズンのパリ市庁舎前に設置されたメリーゴーランド

 クリスマスが近づいて、パリの街にも色とりどりの飾りが取り付けられ、イルミネーションが点灯されました。毎年この時期になると、パリ市庁舎前広場に2階建てのレトロなメリーゴーランドが登場し、家族連れでにぎわいます。夜はライトアップされて幻想的な美しさになります。華やかな装飾と明るい音楽に包まれて、上下する木馬に乗ってぐるぐる回る……短くも夢のような時間が流れるメリーゴーランド(Manège マネージュまたはCarrousel カルーゼルと呼ぶ)は、フランスでは遊園地だけにあるものではなく、もっと身近な存在で、さまざまな公園や広場で見かけます。有料とはいえ1回数ユーロ。子供にねだられても気軽に乗せてあげられるような、日常的な遊具です。

 パリにはとりわけ美しいメリーゴーランドがたくさんあります。市庁舎前は不定期ですが、チュイルリー公園など常設のものも多く、1年中楽しめます。イエナ橋のたもとにあるものはエッフェル塔を背景に、モンマルトルの丘のふもとにあるものはサクレ・クール寺院と一緒に素敵な写真がとれる人気スポットです。リュクサンブール公園には1879年に作られた現存する最古のメリーゴーランドがあり、オペラ座を設計したシャルル・ガルニエが手がけました。植物園内のものも、木馬ではなく絶滅動物や絶滅危惧種が乗り物になっていて面白いのですが、一番の変わり種は、人力で動かすメリーゴーランドでしょう。パリ12区にある、昔の移動遊園地の乗り物やゲームを実際に体験できる縁日博物館には、1897年に作られた自転車式のメリーゴーランドがあります。木馬の代わりに自転車のようなものが円形につながっていて、乗った人全員で頑張って漕ぐと、だんだんスピードが上がり始めます。最初は面白いのですが、だんだん怖いくらい速くなり、最高で時速60kmにもなるそうで、これは当時の人々にとってのジェットコースターとも言えそうです。漕ぐ自転車のサイズから見ても、子供向けではなく、大人が楽しむものだったようです。なお、普通のメリーゴーランドが19世紀半ばに誕生したときの動力は蒸気機関で、その後、電気に移行しました。

◇初出=『ふらんす』2023年12月号

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著者略歴

  1. 桜井道子(さくらい・みちこ)(トリコロル・パリ)

    パリとフランスの情報サイト「トリコロル・パリ」を運営。著書『おしゃべりがはずむ フランスの魔法のフレーズ』。

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