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「アクチュアリテ 社会」桜井道子(トリコロル・パリ)

パリのノートルダム大聖堂がついに復活


真新しい尖塔がそびえる今年9月のノートルダム大聖堂

 2019年4月15日の夕方に発生したノートルダム大聖堂の大火災の衝撃は今も忘れることができません。中世の昔からパリの歴史を見守ってきたこのモニュメントが激しく燃え続け、炎に包まれた尖塔がポキリと折れて崩れ落ちる姿は、見るに耐えないものがありました。消防隊員たちの必死の消火活動のおかげで、翌朝ようやく鎮火したものの、屋根の3分の2が焼け落ちるなど大きな被害を受けました。それでも見慣れた正面のファサードや2つの塔、バラ窓は損壊を免れ、聖遺物や絵画などの文化財が無事に救出されたのは不幸中の幸いでした。マクロン大統領は、この大聖堂が、キリスト教信者であるか否かに関わらずフランス国民全員にとって大切な遺産であるとして、再建を約束しました。
 計250もの企業からさまざまな分野のエキスパートたち1000人以上が集合し、新型コロナウイルスの流行とロックダウンという予期せぬ事態に見舞われながらも、再建工事は着実に進められていきました。焼け落ちた屋根の骨組みや梁は2000本ものオークの木、火災で損傷したドームや壁は1000m3もの石材、屋根は4000m2の鉛板を使って再建されました。修復または新たに作られた彫像(大聖堂の壁から突き出す怪物のようなガーゴイルなど)の数は2000にも上ります。最終的にかかる総費用は7億ユーロ(約1140億円)になると予想されています。これまでに集まった寄付は世界150ヶ国・34万人から合わせて8億4600万ユーロ(約1380億円)で、余剰分は劣化が激しい大聖堂の外壁の修復に使われる予定です。今年3月には地上96mの新しい尖塔がお目見えし、その頂上につけられた黄金の雄鶏の姿が、まさに不死鳥のように蘇る大聖堂を象徴するようでした。
 こうして、大火災から5年半以上が経過した今年の12月、ノートルダム大聖堂が復活します。12月7日の記念セレモニーの後、翌8日からは一般公開がついに再開される予定です。火災前の訪問者数は年間1000〜1200万人でしたが、再開後は1200〜1500万人に増えると予想されており、公式サイト(https://www.notredamedeparis.fr)から無料の時間指定予約が必須となるので要注意です。公開が再開しても工事が完了するわけではなく、後陣と聖具室の修復は2025年、北塔の現代的なステンドグラス設置は2026年まで続きます。

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著者略歴

  1. 桜井道子(さくらい・みちこ)(トリコロル・パリ)

    パリとフランスの情報サイト「トリコロル・パリ」を運営。著書『おしゃべりがはずむ フランスの魔法のフレーズ』。

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