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「アクチュアリテ 社会」桜井道子(トリコロル・パリ)

フランス人の名前、今と昔

 フランス人の名前に注目してみたことはありますか? 知っている歌手や俳優、芸術家、政治家たちの名前を思い浮かべても、日本ほどのバリエーションがないことに気づきます。日本の名付けには常用漢字を使うという制約はあるものの、無限とも言えるような組合せと読み方がありますが、フランスでは長年、特にフランス革命以前まではカトリック教会の聖人暦から選ぶのが当然とされていました。ナポレオン1世が選択肢をそれ以外の聖人暦や古代の人物名まで広げた1803年の法律が第二次大戦後まで有効だったことにも驚きます。1966年に神話の人物名や地方独自の名前なども許されることになりましたが、本当の意味で親が好きな名前を選べるようになったのは家族法が改正された1993年からでした。

1900年に生まれた赤ちゃんの名前ランキング・トップ10

   女の子 男の子
1  Marie  Jean
2  Jeanne  Louis
3  Marguerite  Pierre
4  Germaine  Joseph
5  Louise  Henri
6  Yvonne  Marcel
7  Madeleine  Georges
8  Suzanne  André
9  Marthe  Paul
10  Marcelle  René

 

2021年に生まれた赤ちゃんの名前ランキング・トップ10

   女の子 男の子
1  Jade  Gabriel
2  Louise  Léo
3  Emma  Raphaël
4  Ambre  Louis
5  Alice  Arthur
6  Rose  Jules
7  Anne  Maël
8  Alba  Noah
9  Romy  Adam
10  Mia  Lucas

*INSEE(国立統計経済研究所)のデータより

 

 120年以上前から現在まで、変わらぬ人気を誇っていて驚くのが、女の子のLouiseルイーズと男の子のLouisルイ。ルイはご存知のとおり多くのフランス国王が冠した名前であり、ルイーズはその女性形ということで、まさに定番中の定番のようです。一方、それ以外の名前は完全に入れ替わっていて、名付けの自由化以降、バリエーションがぐんと増えたことがよくわかります。同時に、2021年にもカトリックの聖人名が多くランクインしています。こうして時を超えて伝統が受け継がれていくのですね。

 20世紀初頭に人気だった名前の多くは、今、耳にするといかにもおじいさん、おばあさんらしい名前に感じられるのですが、また世代が変わり、再び流行するなんてこともあるかもしれません。

◇初出=『ふらんす』2022年9月号

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著者略歴

  1. 桜井道子(さくらい・みちこ)(トリコロル・パリ)

    パリとフランスの情報サイト「トリコロル・パリ」を運営。著書『おしゃべりがはずむ フランスの魔法のフレーズ』。

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