まだまだ続くストとフランス国民
「シュミノchemino のような条件」(=極端に優遇された雇用条件)や「シュミノのように働く」(=少し働いたら同じくらい休む)など、フランス国有鉄道(SNCF)がストを開始して約2か月が過ぎた今、シュミノたちを揶揄する表現を耳にするようになった。シュミノとは、SNCF 職員の総称で、特別な優遇措置が適用されている。早期年金支給(運転士52歳、他の職員57歳)が最大の争点だ。このストは、このような既得権を守るためのものである。
確かに鉄道事業は365 日休みなく、しかも安全性に神経を削る。しかし、シュミノの制度ができた時代、16 歳ほどの若年で就労し、蒸気機関車の重労働を続けるのと今は同じではない。スト参加者は、主に運転士で、他の職員のスト参加は15 パーセント弱である。
また、フランス国民の50 パーセントはストを支持しているという報道があったが、これについては、「どこにその50パーセントの人がいるの?」「SNCF を使わない人だよ」と言われるほど、皆うんざりしている。
そして空の交通もスト続きだ。エールフランス航空は今年になり延べ14 日間ストをし、損失額は約300 万ユーロと試算されている。こちらのストは、パイロットの賃値上げ要求だ。エールフランスも巨額の累積赤字があり、増加の一途だ。それでも自分の給料の値上げは要求するわけだ。交渉は難航し、CEO が辞任した。
同社の株式の約4 分の1 を保有する国も、これ以上の負債を容認するものではなく、エールフランス存続の危機であると表明し、強気の姿勢を崩さない。
このような労使ゴタゴタの中、5 月1日の労働者の日には、暴動もあった。車が燃やされ、店舗が破壊された。この暴動は、いつも指摘されている「casseur(破壊者)」と呼ばれる暴れ者達の仕業で、デモに参加していた労働者が引き起こしたものではない。「black bloc(黒い塊)」と呼ばれ、黒ずくめの出立ちでデモに交じり、暴れまくる。
また大学改革反対を掲げ、いくつかの大学ではキャンパス立てこもり、授業ボイコットが行われている。改革はバカロレア(baccalauréat、大学入学資格)を得た学生が、希望校に入学できない現状の解決が目的だ。これも時代の流れが要因で、高等教育進学者が制度確立時に比べ格段に増えたためだ。教育機関別の入試の導入などが検討されている。全員の入学を認め卒業3 割という現状ではなく、入学を絞り込むというものだ。この立てこもりも「agitateur professionnel(プロの扇動者)」によるものと政府はバッサリである。
◇初出=『ふらんす』2018年7月号