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「アクチュアリテ 社会」仁木久惠

2018年1月号 2017年クリスマスの話題


クリスマスのイルミネーション

 クリスマスはキリスト教の最も重要な祭事であり、一番の楽しみでもある。経済的にも一大商機で、財布のひもも緩む。が、良いニュースばかりではない。

 小さな子供たちの一番の関心事である、おもちゃのプレゼントについて、良からぬニュースが話題となっている。それは、偽物のおもちゃ問題だ。ディズニーやサンリオ製品の偽物問題は日本でも話題になるので想像できるだろうが、そのような著作権や商標権などの権利侵害に該当しなくとも、あらゆる偽物問題がある。特にクリスマスを控えた時期は摘発が著しく増加するという。加えて偽物摘発は、年々増加の一途で、この2年で2倍に急増している。原因は、インターネットによる購入の増加だ。

 お店で手に取って買い物をしていれば、何か変だなと偽物に気付く時もあるし、名の通ったデパートや小売店で偽物に遭遇することはまずない。しかし、便利なインターネット販売では多発している。異常な廉価販売はまず疑うべきと税関職員は注意喚起している。

 偽物問題はおもちゃに限らないが、おもちゃが特に問題視されるのは、子供への安全問題があるからだ。燃えやすい素材、皮膚や体に有害な染料、雑な組み立てなどである。投げたり、引っ張ったり、なめたりする子供の行動に対処しなければならない。EUにもおもちゃの安全基準があり、合格品にはEU マークが付けられる。例えば、ぬいぐるみのクマの目を、どの位の力でどの位長く引っ張ってもちぎれないかなど詳細に決められている。しかし、もちろん偽物おもちゃには偽物EUマークが付いている。

 そしてもう一つ、パリの人々が少しがっかりすることもあった。シャンゼリゼで開催されていたクリスマス・マーケットが今年は中止となった。ホットワインや軽い食べ物、クリスマス用品や地方の物産、遊戯施設などの小屋が並び、夜遅くまでそぞろ歩きを楽しむ。2008年に始まり、この10年ですっかりおなじみになったパリの風物詩でもある。

 しかし、今年はパリ市が興行主に公道利用の権利契約の更新を拒み、そこから騒動が始まった。7 月にパリ市が2年毎の契約更新を拒否し、その撤回を求めて興行主はパリ行政裁判所に提訴した。11月にパリ市側に問題はないと判断が下された。興行主側は期間中、1300万人の人出と450万ユーロ(約6 億円)の売上という経済効果を主張し、国務院へ上告する構えだ。対するパリ市は安全確保を理由に挙げている。イルミネーションで華やぐシャンゼリゼではあるが、昨年までに比べると、確かに少し寂しい気がする。

◇初出=『ふらんす』2018年1月号

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著者略歴

  1. 仁木久惠(にき・ひさえ)

    在仏会計コンサルタント。税理士。博士(経営情報科学)

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