2018年5月号 パリ、物価の高い街
物価の高さによる都市別世界ランキングが発表された。フランスではパリが2位の銀メダル獲得である。トップ10 は次のとおりだ─1 位シンガポール、2 位パリ、3 位チューリッヒ、4 位香港、5位オスロ、6 位ジュネーヴ、7 位ソウル、8 位コペンハーゲン、9 位テル・アヴィヴ、10 位シドニー。
このランキングは毎年、英国の調査会社が160 項目の消費財とサービスの価格を調査し発表している。食料品、家賃、衣料品、交通費、および光熱費など日々の生活と余暇の統計に基づく。
ざっくり見ると、西欧5 都市、極東3都市、中東1 都市、オセアニア1 都市である。北米も日本もない。
近年の推移をみると、シンガポールはすでに5 年も1 位の座を守っている。大きな動きでは、5 年前には21 位だったソウルが7 位、テル・アヴィヴも34 位から9 位となった。
テル・アヴィヴの例からは、為替変動が理由として挙げられる。これは北米と日本も同様である。ニューヨーク13 位、ロサンゼルス14 位。そして2013 年以降トップ10 から姿を消した東京と大阪も円安の影響によるが、低いインフレ率も大きな要因である。
西欧諸国では、スイスと北欧の諸都市、およびユーロ圏から唯一パリがトップ10 入りである。私の個人的経験からも、スイスや北欧を旅行すると、何をしたわけでもないのにお金がどんどん無くなり、物価高を感じる。
パリに注目すると、ガソリンは世界で最も高く、1 リットルあたり1.43 ユーロ(約200 円)、最安値はシドニーの0.8ユーロだ。そして主食のパンは、1 キロあたり5.14 ユーロ(約700 円)で世界3 位の高値だ。わかり安く言えば、パン屋でバゲット1 本が約1 ユーロ(135 円)である。最安値の1 位獲得は、ワインだった。これは納得。
わりと影響が大きい不動産価格(賃借料含む)では、パリは8 位だ。モナコや香港など土地面積から高値が想定される都市を除けば、かなり高い方だ。欧州圏では、2 位にロンドンがつけており、パリの2 倍の価額だという。パリの不動産も上昇が止まらず、今年は1 平米あたり1 万ユーロが予想されている。
この統計は、あくまでも都市別であり、フランスでいえばパリの話であることに注意が必要だ。地方の物価とはかなり異なる。そして旅行者を別として、住人は所得と物価のバランスがとれていれば、物価高とは感じず生活を送れる。パリジャン、パリジェンヌのサラリーはそんなに高いのか? あるいは、物価高に耐えているのか?
◇初出=『ふらんす』2018年5月号