2017年10月号 フランスの電気自動車政策
フランスの電気自動車政策
7 月、世界中がざわめくような政策が発表された。アメリカの「パリ協定」離脱を横目に、CO2 削減および大気汚染対策のため、2040 年までに国内のガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する旨を、フランスは公表した。環境問題に大きな一石を投じたのである。
それらの車両に替わるのは、電気自動車(EV=electric vehicle)である。現在までもフランスはEV の普及を推進してきた。しかし、それでも2017 年上半期の新車の販売台数では、ガソリン・ディーゼル車が95.2%を占め、ハイブリッド車(HV=hybrid vehicle)が3.5 %、EV はわずか1.2%だ。EV 普及には、走行距離、バッテリー寿命、充電インフラなど、解決しなければならない問題が多くある。
1 回の充電による走行距離については、ルノーが400km の走行を可能にしたという。フランス政府が、ルノーとPSAの大株主であることも、技術開発推進に追い風となっている。また、充電インフラもパリのシェアEV(Autolibʼ)の発足時、短期間のうちにパリ中に充電箇所を整備した実績もあり、自信を持っているのであろう。
このフランスの政策は、世界に大きな影響を与えた。ドイツにもガソリン・ディーゼル車の販売禁止への動きがあり、環境問題に積極的なオランダやノルウェーも同調している。また、アジアでも、インドは「30 年までに販売車両を全てEV にする」と大きな目標を掲げ、中国も同様の政策を試案している。
現状では、EV の方がコスト高であるが、部品や製造工程を比較すると、EVの方がはるかにコストカットしやすいとの報告がある。車両販売価格の問題は、価格低下や助成金で解決できるとして、次に電気代の問題がある。燃料費である電気代が高ければ、普及の足かせになることは明らかだ。
この点、原発大国のフランスは自信満々である。フランスの電源別電力構成比は、2014 年時点で、原子力77%、水力・再生可能エネルギー17%、石炭・石油・天然ガス5%で、CO2 の観点からも問題がなく、安い。他方、フランスは「原発の発電量比率を下げる」と表明しているが、この意味を取り違えてはいけない。これは、「比率を下げる」のであり、「発電量を下げる」のではない。つまり、次のようにするということだ。
・2014 年:6,313 万kW(全体の75%)
・2025 年:6,320 万kW(全体の50%)
この電力供給に対し、日本は、化石燃料86%、原子力0%、再生可能エネルギー14%である。たとえEV が普及しても、燃料でCO2 を排出するのであれば、意味がない。どのような対策をたてるのだろう。
◇初出=『ふらんす』2017年10月号