出生数と人口動向
2018年のフランスの人口動向が発表された。一番大きく取り上げられたのは、4年連続の出生数の減少である。そして、出生と死亡の人数差がほとんどなく、第二次大戦後での新記録となったことも注目された。つまり、出生が減り、死亡が増えていることが示される。死亡の増加は、ベビーブーム世代の高齢化が関連している。
2019年1月1日時点でのフランスの人口は66,993,000人(千人以下四捨五入)。2018年の人口に比べ、0.3パーセント、20万人の増加だ。そのうち移民による増加が58,000人だった。
わずかな人口増加だったとはいえ、先進国のうち、順調に人口が増加しているのは、フランス、イギリス、アメリカくらいである。日本を含め、ドイツ、ロシアなど人口減少が顕著となっている先進国が多い。ヨーロッパでは、ポーランドを筆頭に、旧東欧諸国が軒並み人口減少に転じ問題視されている。
出生に焦点を戻すと、2018年は758,000人の新生児が生まれたが、前年に比べ、12,000人の減少だった。女性一人当たり、1.87人の出産となる。2006年に2人を超え、2010年には2.03人と喜ばしいニュースとして大々的に報道され、その後2014年までは2人をキープしていた。しかし2015年に1.95人と激減して以来、減少の一途である。とはいえ、この数値も、日本1.43人、ドイツ1.5人、アメリカ1.8人に比べれば良い方だ。
また、第一子を設ける年齢は、女性が30.5歳、男性が31歳となった。年々高齢化している。女性の年齢比較では、EU の平均は30.5歳となり、イタリアの31.7歳が1位、フランスは12位だ。EU 諸国の出産年齢の高齢化が顕著に表れている。
このような出生数の減少や出産年齢の上昇は経済的理由も大きく影響しているという。家族手当、所得税控除など家計収入に直結する問題や、TVA の増税などが挙げられている。さらに託児所不足、育児休暇、給食費の値上げ、通学バスの有無など細かな要因も指摘されている。これらの現実問題とは別に、将来への不安や、私生活と職業的社会生活のバランス崩壊の不安も心理的要素として挙げられている。自己が確立してきたライフスタイルの変化が心配になるようだ。
しかし、「フランス人は子どもを持つことを望んでいる」という揺るぎない統計結果もある。希望と現実の間でゆらぐ姿が浮かぶ。最後に、新生児10人のうち6人が婚外子であるという日本ではまだ考えられない数値を紹介しておく。
◇初出=『ふらんす』2019年3月号