2017年5月号 農業大国フランスのBIOへの取り組み
農業大国フランスのBIOへの取り組み
ここ数年、目に見えて「BIO(ビオ)」と表示された商品が増えた。野菜や果物はもちろん、肉、チーズ、乳製品、ワインやビール、お菓子やレトルトなどの加工食品、化粧品、衣類、建築資材にまで及ぶ。大手スーパーなどの自社ブランドBIO商品もあるが、フランス農務省が認定するものには緑の「AB」ラベルがつけられている。Agriculture Biologiqueの略で、有機農産物認定を意味する。
ABラベルは、農薬を一切使用せず、自然のままに栽培されたものにつけられる。消費者が政府認定のBIO商品であることを容易に認識できるように、ABラベルを記すことが義務付けられている。そして、このABラベルは、国民の約90パーセントに認知されている。
フランスのABラベル取得の基準は、諸外国に比べてかなり厳しいと言われている。詳細な規定がある中、まず農地の土壌基準がある。農薬を使用していた農地は、3年かけて残留物のない農地に転換しなければならない。そして、殺虫剤や化学肥料を使用せず栽培しなければならず、遺伝子組み換えもご法度である。乳製品や肉については、動物への飼料の規制、加えて広さなど飼育環境にも定めがある。加工食品の場合は、95パーセント以上の原材料がBIOでなければならない。
フランスのBIOへの取り組みは、戦後の食糧大量生産政策による土壌・水質汚染に起因する。1970年代に着手したが、なかなか広がりが見えず、耕地面積に占める割合もごくわずかだった。しかし、近年の食の安全への関心の高まりの中、政府は2007年に、2012年までに有機農業の割合を農業全体の6パーセントに、2020年までに20パーセントに引き上げる目標を示した。2020年まであと3年であることを考えれば、この目標達成は無理と言わざるを得ないが、この10年でBIO認定農地は2倍以上、BIO農業従事者も1.5倍以上に増加している。市場規模は約40億ユーロで、4倍の成長がみられる。つまり、ここ数年の急激な伸びが立証されるのである。
消費者の購買理由は、安全で健康によいことが一番に挙げられるが、おいしいからというもっともな理由もある。BIO製品は、野菜果物などで1.2~1.5倍と割高であるが、以前に比べると割高感も落ち着いてきたように感じる。フランス国民の40パーセント以上が月に一度はBIO製品を購入するようになったそうだ。学校給食をBIOでという取り組みも始まっている。また他方、虫食いや規格外の形状のため破棄されていた作物も逆にありがたがられ、無駄もなくなるという。農業大国フランスの大きな成長産業として今後も動向が注目される。
◇初出=『ふらんす』2017年5月号