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「アクチュアリテ 社会」仁木久惠

2017年7月号 パリの新名所

パリの新名所

 素晴らしい歴史的建造物が並ぶパリ。世界で最も美しい街の1 つである。古い町並みにありながら、21 世紀の近代建築もまた次々と誕生している。パリではここ数年、なにかと話題に上る建築ラッシュである。

 パリ人も観光客も、「えっ!」と驚いたのは、エッフェル塔のすぐ近くの建設中の建物のてっぺんに、光輝く大きなドームが乗せられた時だった。別の場所で作成されていたドームをクレーンで持ち上げ乗っけたのだ。その建物は、キラキラの5 つのドームを持つ、なんとロシア教会だった。パリのど真ん中、セーヌ河沿いに、である。

 

 

 この建築計画は2007 年に始まり、国立気象局Météo France の跡地を国が売却し、ロシアが1 億7 千万ユーロをかけて建設したものだ。最初に建築コンペで選ばれた案は、ユネスコの世界遺産にも登録されているセーヌ河岸の風景に似つかわしくないとパリ市が反対した。当初案の次に採用されたのは、ジャン= ミシェル・ウィルモット設計で« Moon Gold » と呼ばれる銀色に近い金箔に覆われた玉ネギ型のドームと、ブルゴーニュ産のベージュ色の石による建造物だ。この石は、パリの建造物にも多く使われており、周りとの調和が配慮されている。ロシア教会であることにびっくりするが、洗練された美しい建造物である。仏露友好の証としてサルコジ時代に始まった計画だったが、2016 年10 月の竣工式には、シリア問題をめぐる対立からプーチン大統領も出席せず、フランス側も閣僚は一人も出席しなかった。

 この2 年前の2014 年秋には、ブローニュの森の中に、巨大な帆船をイメージした建造物が現れた。フランク・ゲーリー設計のルイ・ヴィトン財団の建物だ。流れる水を切って進んでいく帆船さながらの様子は圧巻である。内部は美術展示会場や音楽・講演会場、ワークショップやレストランなどがあり、2016 年秋から2017 年にかけて開催されたシチューキン・コレクションの展覧会には連日大勢の人がつめかけた。

 2015 年には、パリ北東部にフィルハーモニーPhilharmonie de Paris と呼ばれるコンサート会場が完成した。設計はジャン・ヌヴェルである。高速道路沿いに銀色に輝く美しい曲線の建物が現れる。内部の設計も非常にユニークだ。

 そして、今年2017 年には、少しパリ市を出たところのセーヌ河の中の島に坂茂(ばん しげる)設計のコンサート会場も完成した。これも船をイメージしたという球型の建築物である。それぞれ極めて個性的な建造物だが、すでにパリに溶け込んでいるところが、パリなのであろう。

 

◇初出=『ふらんす』2017年7月号

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著者略歴

  1. 仁木久惠(にき・ひさえ)

    在仏会計コンサルタント。税理士。博士(経営情報科学)

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