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「アクチュアリテ 社会」仁木久惠

パリの大規模駅、北駅の大工事

 東京オリンピックの4年後、2024年に開催されるパリ・オリンピックに向けて、北駅の改装プロジェクトが発表された。総工費6億ユーロ(約780億円)の大工事だ。来年2020年に着工、2023年完成予定である。

 パリには4つの大きな駅がある。東に向かう幹線が発着する東駅、西に向かうモンパルナス駅、南に向かうリヨン駅、そして北に向かう北駅。他にサン・ラザール駅とオーステルリッツ駅がある。いずれの駅も、日本のような通過型の駅ではなく、鉄道黎明期の終着型(ターミナル)の駅であり、頭端式ホームというそうだ。

 それらの中で最も大きいのが北駅で、フランス一どころか、ヨーロッパ一の大きさを誇る。1日の利用客も、ヨーロッパ最大であり、世界ランキングでも、上位を占める日本の駅に続く。現在1日あたりの利用客は70万人で、2024年に80万人、2030年に90万人へと増加を見越した拡大計画だ。

 北駅の歴史をみると、1864年に4つのプラットフォームに8本の線路で開業した。以来150年の間、大規模な工事はなく、1889年と1900年の万国博覧会を機に少し拡張しただけである。現在は、イギリス、ベルギー、オランダに向かうユーロスター、リールなどフランスの北方の街に向かう高速鉄道TGV や主要幹線、ベルリンや北欧に向かう国際列車、近郊や空港とパリを結ぶRER2 路線や在来線、パリ市内の地下鉄2路線が北駅に集まってくる。

 現在の広さから約3倍に拡張される。空港のように出発と到着が区分され、人の流れがスムーズになる計画だ。また、イギリスに向かうユーロスターの乗車には、現在でもイギリスがシェンゲン条約に加盟していないため、パスポート・コントロールが設けられているが、Brexit(英国EU 離脱)により税関も加わり国境機能が拡張される。他には、レストランや店舗など商業施設の充実や、自然を取り入れた遊歩道の設置も盛り込まれている。

 オリンピックでは、空港に到着する人のパリ市内へのアクセスポイントにもなり、重要な役目を担うことになる。多くの国際列車の発着など、日本には見られない様相もある。今でさえ大きくて迷ってしまう北駅であり、荷物をもって人をかき分けて走る乗客の姿を目にするが、この3倍の広さを流れるように移動する人の波が見られるのだろう。そして、大きな駅にはつきものの治安の問題もある。今はフランスで最も危険な駅などと悪名を馳せているが、顔認証の監視カメラ設置など、安全確保にも多額の予算が割かれるようだ。

◇初出=『ふらんす』2019年5月号

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著者略歴

  1. 仁木久惠(にき・ひさえ)

    在仏会計コンサルタント。税理士。博士(経営情報科学)

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