シェア自転車に電動自転車登場
パリ市のヴェリブVélibʼ(自転車のVélo と自由の Liberté の造語)と呼ばれるシックなグレイの自転車が、2018年になり、明るい黄緑と水色の2種類に変わった。当初、色が変わっただけかと思われたが、それだけではなかった。
ヴェリブは、2007年にパリ市に導入されたシェア自転車である。環境問題と市民の公共交通機関利用の利便性の観点から採用されたシステムだ。開始から10年を経た2017年末には、駐輪スポット1,800か所、自転車20,000台、定期パス購入者300,000人という統計数字だった。開始当初、借りたはいいが駐輪場が満杯で返せない返却難民問題が多発したが、今は300メートル毎に駐輪スポットがあるほどに増設されている。
北欧諸国やフランス国内の諸都市にはパリ市に先駆けてシェア自転車を導入していた所もあるが、このパリのヴェリブの成功が引き金となり、世界中にシェア自転車のシステムが広がったと言われる。パリ市からサービスを受諾していたのはJC Decaux という会社で、パリ市以前にもすでに他都市で経験を持っていたが、パリでの自転車の盗難と破損の数は突出しており、その対応と費用負担でパリ市と契約を見直す事態もあった。そして、2017年末をもち、パリ市とJC Decaux社の契約は終了し、2018年からSmovengo 社が2032年末までの15年契約を結んだ。この提携会社の変更により、自転車も変わったわけだ。
何より大きな変更点は、電動アシスト自転車の登場だ。そのために、半年以上かけて駐輪スポットを電気チャージ機能付きへと全面工事した。しかし、半年の工期ではとても間に合わず、2018年夏までは大混乱だった。駐輪スポットは工事中だし、自転車はないし、という状態で利用者の不満は爆発した。混乱は徐々に収まってはいるが、予定より大幅に遅れ、2019年になっても2017年の環境には及ばないという。
すべての自転車が電動アシスト付きになるわけではなく、当面は30パーセントほどだそうだ。水色が電動アシスト付き、黄緑が通常のものだそうで、2色になった理由がようやくわかった。電動アシスト付きには、スマホが使えるようにUSB ポートとスマホの装着台が備わっている。
以前の自転車には、「私は、歩道を走らず、信号と停止を守ります。二人乗りをせず、逆走はしません」と書いてあった。つまり、それだけ自転車のマナーは悪いわけだ。信号を無視し我が物顔に走る様はいずこも同じである。さらに、今や自転車も眉をしかめる電動トロチネット利用者が横行している。レンタル会社は儲かっているようだが。
◇初出=『ふらんす』2018年12月号