フランス、今年の猛暑と干ばつ
異常気象の話は、もうたくさんと思うことも多いが、この夏のフランスも再びこの話題がトップニュースに取り上げられている。6月下旬は全国的に高温(日本では猛暑日というのだろうか)に見舞われた。最高気温のピークは28日で、同日に気象記録が2度塗り替えられた。はじめにプロヴァンス地方ヴォークルーズ県のカルパントラで44.3度を記録したのだが、その後も気温は上昇し、同県のヴィルヴィエイユで45.1度となり記録更新となった。湿度の低いフランスなので、きっとじりじりと焼けるような暑さだったと想像する。
パリでも連日35度以上が続き、夜も20度を下回らなかった。しかし、日本の熱帯夜の基準となる25度以上の夜はまだ記録しておらず、この暑さも4、5日続いただけだった。暑いとはいえ、日本に比べればまだなんてことない。したがって冷房設備の普及も、限りなく100パーセントに近い日本に比べれば、家庭でのエアコン設置率はわずか4パーセントである。当然南の方が設置率は高く、パリの一般住宅で冷房がある家はほとんどない。地下鉄も全線に冷房があるわけではなく、バスはようやく今年から冷房付き車両がお目見えしたばかりだ。
猛暑に続き、干ばつが連日話題となっている。6月半ばからひと月あまり、フランス全土でほとんど雨が降らなかった。雨不足の長期化が近年の傾向だそうだ。パリの降雨統計によると、夏季に降雨ゼロの長期記録は、上位から2018年、2015年、1984年、1976年であり、2019年が最高記録を更新した。
フランス全土でカラカラ状態だ。農作物被害はきっと甚大なものになるだろう。酪農も牧草が枯れ始め、対策の検討に入った。庭の水まきや洗車を控えるようにと、今まではあまり目にしたことのないような注意喚起も報道され始めた。今のところ、上水道への取水制限はまだとられていない。
昨年の水不足の時にも話題となったが、地下水の急激な減少により、地盤沈下が起こり、家が傾くなどの被害が多発している。扉や窓が開かなくなったり、壁がひび割れたり、床が傾いたりしている。政府も干ばつが原因で家屋に損害を被った人を救済すべく、自然災害に認定することとした。
山火事もいくつか発生している。そして7月14日のフランス革命記念日では、火災の危険を理由に花火大会を中止した自治体もあった。このような処置も過去に例のない事である。
暑すぎたり寒すぎたり、大雨だったりカラカラだったり、気象の極端化はここフランスでも顕著である。
◇初出=『ふらんす』2019年9月号