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「アクチュアリテ 社会」仁木久惠

2018年4月号 フランス2018年の大雨


アルマ橋のズアーヴの像

 天気の話は、洋の東西を問わず挨拶につきものだ。近年は「地球温暖化による異常気象」という表現が、ごく当たり前に使われ、会話の出発点ともなる。今年の冬は、フランスでは雨続き、日本は寒さと大雪に見舞われ、南半球のオーストラリアでは40 度を超える猛暑だった。

 パリでも1 月に入り、雨ばかりだった。雨が降らなかった日はないといっても過言ではなかった。セーヌ川の水位は日増しに上昇し、パリ近郊では洪水が起こり、多くの住民が自宅を離れ避難生活を余儀なくされた。しかも今回の洪水は長雨によるもので、以前の集中豪雨とは様相が異なり、2 週間以上たっても水はひかなかった。降雨量、日照時間、被災者数、被害額など様々な記録を更新したことは言わずもがなである。

 パリ市内では、水位の上昇に従い、次のような状況が起こる。まず、セーヌ川の遊覧船が橋をくぐれなくなり運行中止となる。そして、セーヌ川沿いの低い位置を走る自動車道が通行禁止となる。この位の状況は、春の雪解けによる増水時にも起こりうるものだ。さらに増水すると、セーヌ川沿いを走る高速近郊線RER のC 線が止まる。この位の水位となると、川沿いに建つ2 つの大美術館であるルーヴルとオルセーの所蔵品の避難が始まる。今回はさらに、ルーヴルの低層階の展示場が閉鎖された。

 パリ市内のセーヌ川の水位を示す指標として、写真に示すアルマ橋の橋脚を飾る「ズアーヴの像Le Zouave」が用いられる。普段の川面は像の台座より低い位置であり、増水すると、「膝まで隠れた」とか、「腰まで上がった」などと報道される。膝の位置が5.1 メートルでRERが止まる水位だ。2016 年春の増水時は腰骨のところで6.1 メートルだった。今回の増水もほぼこの位置だったが、違いは期間の長さだった。1955 年、1924 年の増水がおへそから胸で7.1 から7.3 メートル。そして大洪水となった1910 年は肩までつかり、8.6 メートルだった。

 なんともフランスらしい指標であるが、気が気ではない。パリ市は洪水対策として、上流に55 000 立方メートルの水が溜められる調節池や放水地の建設を計画している。自然災害が頻発する近年、対策が急がれる。

◇初出=『ふらんす』2018年4月号

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著者略歴

  1. 仁木久惠(にき・ひさえ)

    在仏会計コンサルタント。税理士。博士(経営情報科学)

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