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「アクチュアリテ 社会」仁木久惠

フランスの水泳事情

 夏の休暇には海辺に行くというフランス人が多い。六角形(ヘキサゴン)の国土の三辺を海に囲まれ、気候的にも泳ぐのに適しているフランスでは、特別なことではない。しかし、本格的な夏季休暇を前に、6月の一か月でレジャー中の水難事故で亡くなった人が151人にも上ったという報道があり、水の事故に気を付けるよう注意喚起がなされた。

 溺死の原因として挙げられたのは、「泳げない」ことだった。日本でも痛ましい水難事故の報道は後を絶たないが、原因は飲酒、疲労、潮の流れなどが多く、泳ぎを知らなかったという理由はあまり聞かない。泳げないフランス人がそんなに多いのだろうか? 水泳は今や当たり前に学校で習うものだと思っていたのだが。

 フランス人の7人に1人が泳げないのだそうだ。小学生に限れば、10人に1人が泳げないという。確かにフランスの学校には、運動場や体育館はなく、ましてプールがある小中学校など皆無だ。小中学生は、最寄りの体育館やプールに体育の授業を受けにいかなければならない。そのような理由から水泳の授業も日本に比べれば少ないのが現状だ。

 教育省も水泳を優先事項の1つとし、可能であれば小学校で3 ~ 4 回のトレーニングを計画すべきとしている。しかし、学校にプールがない上に、1万人に1つの割合でしかプールがなく、少なすぎることが指摘されている。学校の授業だけではなく、個人で水泳を習うことも推奨されており、2週間で30時間の集中トレーニングで15ユーロなどと、小学生向けの助成もある。

 一方、学校プールや水泳の授業が普及している日本では、学校プールの維持に費用がかかりすぎるという理由から、学校プールを廃止し、一般のプールを利用する自治体がでてきた。一般プール利用のメリットは、費用の他に、室内プールであるため天候で授業計画が狂わないという点が挙げられている。

 泳げなくても日光浴や砂遊びのために浜辺に向かうフランス人に対し、日本人の海水浴離れも話題になっている。日焼け、潮や砂の汚れが嫌だという人が増えている。代わりにナイトプールがブームなのだそうだ。ナイトプールは、まだフランスでは聞いたことがないが、大型のレジャープールは子どもたちに人気だ。長い滑り台、波や水流のあるプールだ。

 また、別荘や自宅にプールを設置する割合は、フランスが欧州で一番である。価格は高級なもので20,000 ~ 45,000 ユーロ( 約260 ~ 600 万円)、簡易版では7,000 ユーロ(約90 万円)からだそうだ。泳げない人とプライベートプールの相反する様子が伺える。

◇初出=『ふらんす』2018年9月号

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著者略歴

  1. 仁木久惠(にき・ひさえ)

    在仏会計コンサルタント。税理士。博士(経営情報科学)

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