2017年9月号 フランス高速鉄道
フランス高速鉄道
日本が誇る新幹線、それに肩を並べるフランスの高速列車TGV(テー・ジェー・ヴェー)(Train à Grande Vitesse)。高速鉄道網構想や高速列車の研究に着手したのは、日仏ほぼ同時期らしいが、パリ-リヨン間が開業したのは1981 年で、新幹線の開業から17年後だった。
今年7 月にパリ-ボルドー間とパリ-レンヌ間の高速鉄道路線LGV(エル・ジェー・ヴェー)(Lignes à Grande Vitesse) が完成し、華々しく開業した。この開通により、パリ-ボルドー間は、所要時間が3 時間から2 時間4 分に短縮された。
TGV とLGV、少し混乱を招くものである。TGV は車両のことで、LGV は線路のことだ。TGV は軌道の規格(線路の幅等)が在来列車と同じなので、特別な線路を引かなくても、既存の鉄道網を走ることができる。しかし、TGV がいかに高速走行できようとも、やはり線路の傾斜やカーブにより減速を余儀なくされる。そこで、TGV が力いっぱい走れる鉄道網LGV ──高速列車用の線路──が必要になってくる。
この車両と線路網の整備が別々であるところが、新幹線との大きな違いだ。新幹線は、まず新幹線用の特別な線路を引くことから始まる。線路網が整備された後は、新車両の開発が進められ、次々と速く走れる車両が誕生している。
一方フランスは、とにかくTGV を走らせる。そして、LGV の整備が後を追いかけていく。パリ-ボルドー間を例にとれば、途中のトゥールまでは、1989年にLGV が開通している。今回はトゥール-ボルドー間のLGV が完成したということだ。
この在来線をTGV が走行することが、TGV 網を短期間で拡大し、隣接する諸外国にもTGV が乗り入れられる理由である。ベルギー、ロンドンに続き、近年はバルセロナにも通じた。隣接国の主要都市への乗り入れは、飛行機との競争上、必要不可欠なことである。
航空運賃との競争は激化している。ついにTGV もロー・コスト戦争に参戦し、OUIGO(ウィゴー) という“TGV low cost” の販売を開始した。パリ-マルセイユ間の片道がたったの10 ユーロ(約1300 円)からある。車内で電源が使いたければ2 ユーロ追加、荷物1 個5 ユーロ、大きな荷物1 個20 ユーロなどなど。車内への持ち込み荷物は、ハンドバッグ1 個とキャリーケース1 個は無料である。ネットで予約し、カードで払い、チケットは自分で印刷する。そしてプラットフォームでチケットと荷物の個数検査がある。人力を極力省くシステムだ。開発費やインフラに常に多額の投資を必要とする鉄道事業だが、これでは赤字が解消される日は遠い。
◇初出=『ふらんす』2017年9月号