2018年5月号 マリーヌ・ルペンの行方
フランスの極右政党・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首は、このほど3選を果たし、党名の変更を提案するなど党の刷新を図っているが、前途は多難だ。
党大会(約1500 人出席)は3 月10、11 日に仏北部リールで開催され、ルペンは唯一人、党首選に立候補し、得票率100 パーセントで選出された。父親で党戧始者のジャン= マリ・ルペンが務めていた名誉会長職は賛成79.7 パーセントで廃止された。ルペンとしては、戧始者追放により、FN に張り付いていた「人種差別」「外人排斥」のレッテル一掃を狙うと同時に、「国民連合(RN)」への改名も提案し、約52 パーセントの賛成票を獲得したが、全党員のメールなどによる投票で、6 週間後に最終決定する。
党大会にはトランプ米大統領の前首席戦略官兼上級顧問でメディアサイト「ブライト・バード」の前社長スティーヴ・バノンが駆け付け、「歴史は我々の側にあり、我々を勝利に導く。2022 年(仏次期大統領選の年)は我々が勝利する!」と述べ、最近のイタリアやハンガリーでの極右勢力の進出を指摘して、ルペンの勝利を保証した。
バノンは実は、2016 年にはルペンの姪のマリオン・マレシャル= ルペンをFN の「希望の星」と称え、ルペンは「落ち目の星」と述べて将来性に疑問を呈した。マリオンは目下、政界引退中だが、2 月に米国の保守団体「保守政治行動会議(CPAC)」の招待で渡米し、「フランスを再び偉大に」とトランプ大統領の選挙スローガン「米国を再び偉大に」をモジって英語で演説し、スタンディング・オベーションを受けた。
ルペンは大統領選では、「反欧州」「反ユーロ」をスローガンに掲げ、欧州連合(EU)の共通農業政策や難民問題に関連して、「諸悪の根源はEU」と考えている層の取り込みにある程度、成功。しかし、決戦投票直前の上位候補者2 人によるテレビ討論では、エマニュエル・マクロンに完敗した。ユーロ導入と欧州通貨制度(ECU)実施の年月日を混同するなどのミスを犯したほか、大げさな身振り手振りで、若いマクロンの動揺を狙ったが、かえって「大統領としての威厳や品格に欠ける」(仏記者)との負の印象を視聴者に与えた。
副党首のフロリアン・フィリッポも党外に去った。フィリッポは国立行政学院(ENA)出身のエリートで、FN の理論的支柱だった。最近、「愛国党」を結成し、ルペンへの対抗姿勢を鮮明に打ち出した。
ルペンが党刷新に成功し、バノンの予言通り次期大統領選で勝利するには、目下のところ疑問点が多すぎる。
◇初出=『ふらんす』2018年5月号