フランスはパリテ(男女同数)の優等生?
日本でも最近、女性議員数が全体の約1割と少ないところから、男女議員の「パリテ(同数)」が叫ばれ、「パリテ」という単語がおなじみになりつつある。
フランスの場合はどうか。閣僚の場合、男性9人、女性8人で「パリテ」を実現中だ。女性閣僚の中には、フロランス・パルリ軍事相(55)のように予算担当相やブルゴーニュ地方の地方議会副議長を歴任したほか、エール・フランスや国鉄(SNCF)の幹部も務めるなど、男性そこのけの堂々たるキャリアの持ち主もいる。高級官僚養成所の国立行政院(ENA)卒のエリートなので、当然といえば当然だが。
「閣僚の男女同数」は2007年の大統領選で当選したサルコジ元大統領が、選挙戦で公約。後任のオランド前大統領もマクロン大統領も左右の党派を超えて「男女同数」を継承した。
一方、国民議会(下院、定数577議席)の女性議員数は2017年の総選挙で224人(38.8%)。「パリテ」には一歩及ばなかったが、過去最高数だった。前回2012年の総選挙では女性議員は115人(26.9%)と4分の1だった。女性議員数が躍進したのは、マクロン大統領が「右でも左でも政党でもない」と定義する政治グループ「前進!」を引っ提げて、政界に新風を吹き込んだ結果、「政治は男の世界」という既成概念も吹き飛ばされたのかもしれない。97年の女性議員数は約10%、ドゴール将軍が女性の参政権を認めた45年の総選挙では5.6%だった。
女性の議員数が飛躍したのは、08年の憲法改正による。「パリテ」をいくら叫んでも、「かけ声」だけでは成果は期待できないと考えたところは、さすがモンテスキューの「法の精神」を生んだ国である。憲法第1章に、「法は選民をはじめ、男女が商業的社会的に責任ある地位に平等に接近する可能性を助成するべきだ」と明記。選民の場合は、法によって議員候補者を男女同数に規制するなどして、「パリテ」を促進させた。
地方自治体は国政ほどには「パリテ」が進まず、市議会(住民1000人以上)の場合、女性議員は33.2%(国立統計経済研究所3 月発表)とほぼ3分の1。住民が1000人未満の市議会の場合は、もっと少ない。市長も男性が圧倒的に多い。2020年実施の市議会選挙で、首都パリのアンヌ・イダルゴ市長(社会党)が再選されるか否か─。
女性大使は全体の約30%だ。「この5年で倍増」(仏外務省)だが、自慢できる数字ではない。給与所得の男女差はフランスは「ほぼナシ」なので、各国の給与事情を調査する世界銀行からは「100点満点」をもらった。
◇初出=『ふらんす』2019年5月号