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「アクチュアリテ 政治」山口昌子

2018年2月号 ヴォキエ氏は共和党の救世主になれるか

 仏大統領選で社会党と共に惨敗した保守本道ともいうべき右派政党・共和党(Les Républicains)に新党首が誕生した。党首選の第1回投票で過半数をはるかに超える74.6パーセントを獲得したのは本命視されていたローラン・ヴォキエ、42歳だ。ただ投票に参加したのは党員約23万人のうち半分以下の約10万人。投票率42.5パーセントとあって、前途が不安視されてはいる。

 ヴォキエは2004年に国民運動連合(Union pour un Mouvement Populaire。LRの前身)所属の議員とした初当選、07年に誕生したサルコジ政権では初代政府報道官を務め、08年には雇用担当相、10年に欧州問題相、11年に高等教育研究相、15年には14年にUMPから改称したLRの副党首とトントン拍子に出世。早くから次代を背負う右派政治家として注目されてきた。17年春の大統領選では、右派・中道右派の合同予備選で大統領候補に選出されたフィヨン元首相がカラ雇用疑惑で失墜した際、身代わり候補としても名前が挙がった。

 フランスの典型的なエリート。父親は北部の実業家。国立行政学院(ENA)を首席で卒業。パリ政治学院卒に加え、マクロン大統領が入試に失敗した最難校の高等師範学校(エコール・ノルマン・シュペリウール)卒の本物の秀才だ。女性問題のゴタゴタもない。01年に結婚したシャルロット夫人はパリの名門進学高校ルイ・ルグランの同級生。「クラスで一番勉強のできる男の子」と「クラスで一番可愛い女の子」の初恋同士だ。夫人もパリ政治学院、高等経済商業学校(ESSEC)卒のエリートだ。

 若白髪だが、長身でハンサムと何もかもが揃ってはいるが、党首選の投票率が過半数に満たなかったように、LR支持者から全面的支持を得ているわけではない。懸念材料としては移民や経済、社会政策に関する右傾化だ。最近の世論調査でも約40パーセントが「右の右」と判断した。

 大統領選当時、「ヴォキエとなら組めるかもしれない」と極右政党・国民戦線(Front National)のマレーヌ・ルペン党首の姪、マリオン・マレーシャル=ルペン(17年6月の総選挙に出馬せず突如政界引退)が発言したために一挙に広まった懸念だが、ヴォキエ自身は「笑わせる」(大衆紙『パリジャン』でのインタビュー)と一蹴している。

 予備選で敗退したサルコジ元大統領やジュペ元首相に比較すると、小粒な印象も否めない。ヴォキエの党首就任でLRの大物議員グザヴィエ・ベルトラン元保健相が党員を辞任したのは、党内のこうした空気の反映だ。2022年の次期大統領選に向けて、果たして崩壊寸前の党の再建なるか。

◇初出=『ふらんす』2018年2月号

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著者略歴

  1. 山口昌子(やまぐち・しょうこ)

    産經新聞前パリ支局長。著書『フランス流テロとの戦い方』『パリの福澤諭吉』

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