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「アクチュアリテ 政治」山口昌子

2017年11月号 マクロン大統領の大試練、労働改正法

マクロン大統領の大試練、労働改正法

 エマニュエル・マクロン大統領の支持率が就任3か月で当初の60%台から40%前後に急落した主要因に、「労働改正法」がある。従来の労働法は「3人の弁護士が3年がかりで1人を解雇」と言われるほど、被雇用者に有利だった。つまり、経営者側に不利だったわけで、正規雇用を控える要因となり、約20年来の10%前後の高失業率の原因でもあった。

 歴代の政府も改正を試みたが、国民議会での審議中に野党から修正案が多数出され、骨抜きにされるのが常だった。

 そこで、マクロン政権が使ったのが、「オルドナンス(政府への授権による立法)」という奥の手だ。極左グループ「服従しないフランス」を率いるジャン=リュック・メランションが「社会的クーデタ」と怒って9月23日に大規模デモを呼びかけ、共産党系労組・労働総同盟(CGT)が同12日と21日にデモを実施したゆえんだ。

 政府が8月末に発表したオルドナンスの内容は①労働裁判所(Conseil de prudʼhommes)に「不当解雇」として提訴する期間を従来の2年から1年に短縮するなど解雇手続きの簡略化②労働裁判所が「不当解雇」と認めた場合に経営者が支払う補償金の上限設置などだ。

 最新の世論調査(オピニオン・ウエー発表)では68%が「経営者に有利な改革」とみている。一方、旧労働法では解雇時の賠償金が給料の5分の1だったのが4分の1と25%アップしたこともあり、63%が改正前の労働法は「不適宜」と回答し、高失業率解消のためには荒療治が必要との認識も示した。

 9月12日に実施されたCGT主催のデモの参加者は「全国で40万人(警察発表22万3000人)、パリで6万人(同2万4000人)」だった。日本の場合なら大成功だが、フランスでは、「盛り上がりに欠けた」(左派系週刊誌ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール)との指摘が多かった。大衆紙パリジャンの世論調査でも「成功」は31%に留まった。

 社会党系のフランス民主労働連盟(CFDT)がデモより政府との協議を優先したほか、最も先鋭的とされる労組・労働者の力(FO)も参加を見合わせたからだ。

 マクロン大統領の任期は5年だ。米国大統領のように中間選挙もない。大統領は、「怠け者、つまり、国内でも欧州内でも物事を動かすべきではないと考えている彼女らや彼ら」ではなく、「『改革』を掲げた自分に投票した人たちのために断固、働く」と宣言している。

 「怠け者」という激しい言葉に反発したメランションは早速、「総ての怠け者」の結集を呼び掛け、「打倒マクロン」を叫んでいるが、果たして成功するか──。

◇初出=『ふらんす』2017年11月号

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著者略歴

  1. 山口昌子(やまぐち・しょうこ)

    産經新聞前パリ支局長。著書『フランス流テロとの戦い方』『パリの福澤諭吉』

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