白水社のwebマガジン

MENU

釣馨 + Ghislain MOUTON「Dessine-moi un mouton !」

第8回 子供の歌で憶えるフランス語

フレンチブルーム 「子供に学ぶフランス語学習のヒント」と言うテーマで3回やりましたが、今回は子供向けのフランス語の歌を題材にします。読者からの要望も多かったそうなので。

ひつじ これも「子供に学ぶ」に通じますね。子供は歌いながら、リズムとメロディーで文を丸憶えするわけですから。まずは、Les petits poissons なんかいかがでしょうか。

フレンチブルーム Les petits poisons dans l’eau nagent, nagent, nagent, nagent, nagent...♪「水の中の魚が、泳ぐ、泳ぐ、泳ぐ…」という歌ですね。

ひつじ このフレーズで現在形の三人称複数の活用語尾 -entは発音しない飾り物だ!ということがわかります。

フレンチブルーム 確かに耳から入れば、-entの読み方を間違えずにすみますね。日本の学生は文法から入るので、活用語尾の -entを見て、文字を読もうとします。それで一年経っても大半の学生が間違えます。

ひつじ フランス人の子供も、初めての読み(lecture)の授業で -entを見てとまどいますね。耳で分かっているはずなのに、日本の学生みたいに「エント」と読んでしまいます。

フレンチブルーム 映画『アメリ』にも–ent にまつわるシーンがありました。元小学校教師のお母さんが主人公のアメリにフランス語を教えているシーンなんですが、黒板に書かれたLes poules couvent souvent au couvent.(めんどりはしばしば修道院で卵を産む)を小さいアメリは「レ・プール・クーヴ・スーヴ・オ・クーヴ」と読んでしまい、怒られます。couvent (動詞 couver)を正しく読んだところまではよかったのですが、それにつられて、動詞でない souvent と couventまで同じように読んでしまうわけです。逆のパターンですね。他にはどんな歌がおすすめですか?

ひつじ 子供の歌には動物がたくさん出てくるので、動物の名前を覚えるのに便利ですね。L’araignée gypsie, monte à la goutière...♪ これはクモの歌、「クモのジプシーは、雨樋を上る…」。Petit escargot, porte sur son dos, sa maisonnette...♪ これはカタツムリ、「ちっちゃなかたつむりは、背中にちっちゃなおうちを背負っているよ…」。Une souris verte qui courait dans l’herbe...♪ これはネズミ、「緑のねずみさんが草むらを走っていた…」。Dans sa maison, un grand cerf, regardait par sa fenêtre, un lapin venir à lui...♪ これは鹿の歌で、ウサギも登場します。「うちの中で、大きな雄鹿が、窓から見ていた、一匹のウサギが彼のところにやってくるのを…」。

フレンチブルーム うちの子供がお気に入りだったCD付の歌集には Trotte petit cheval rouge, pour aller jusqu’à Toulouse...♪ という歌が入っていました。いろんな色の子馬がそれぞれフランスにある町に出かけていくという歌詞なので、色とフランスの地名が覚えられます。Mon âne というロバの歌もありますね。Savez-vous planter les choux では〈savoir +不定詞〉(〜できる)、Oh! Escargot のリフレイン J’ai vu. T’as vu...♪も印象的で、複合過去が音の塊として入ってきます。Jean Petit qui danse は、3回聴けば、くせになるメロディーとともに、指、手、腕と、身体の主要な部位が全部覚えられ、学生にも評判でした。どの歌も、とても教育的ですね。ところで、子供の歌はフランス語で comptineと言いますね。

ひつじ これはcompter(=prendre en compte, énumérer etc...)という動詞から来ています。物語を語るという場合、今は conter une histoireと言いますが、動詞としてはcompterの方が古くて、あとから現在のconter が派生したようです。comptineではないけれど、ジュリエット・グレコのUn petit poisson, un petit oiseau(作詞Jean-Max Rivière)をよく娘に歌ってました。今でも歌っています。紹介してもいいかな。

Un petit poisson, un petit oiseau
S’aimaient d’amour tendre
Mais comment s’y prendre
Quand on est dans l’eau

小さい魚と小さい鳥が
優しく愛し合っていましたとさ
でもどうするのだろう
水の中にいるのに

フレンチブルーム 鳥と魚という、住む環境が違う生き物が愛し合うと楽しそうです。男女関係になぞらえるとさらに味わいがありますね。またoiseau-eau, tendre-prendre のように、歌は韻を踏むので、発音と綴りの関係にも注意が向きます。

ひつじ 歌はやはりいいですね。何気なく1歳のときから聞かせるだけでも、子供は勝手に覚えていくし、耳や発音が良くなるケースが多いと思います。

フレンチブルーム みなさんもyoutubeにもたくさん動画がアップされていますので探してみてください。またフランスの書店、Gibert Jeune や Fnac などにCD付歌集(ソングブック)がいろいろ売っています。それぞれ特徴があるので、店員さんに相談すると良いものを薦めてくれるでしょう。

【取り上げた子供の歌のタイトル一覧】
Les petits poissons
L’araignée gypsie
Petit escargot
Une souris verte
Dans sa maison un grand cerf
Trotte petit cheval
Mon âne
Savez-vous planter les choux

◇初出=『ふらんす』2015年11月号

タグ

バックナンバー

著者略歴

  1. 釣馨(つり・かおる)

    神戸大学他非常勤講師。仏文学・比較文学。FRENCH BLOOM NET 主宰。

  2. Ghislain MOUTON(ジスラン・ムートン)

    琉球大学非常勤講師、ひつじフランス語教室代表。

フランス関連情報

雑誌「ふらんす」最新号

ふらんす 2025年11月号

ふらんす 2025年11月号

詳しくはこちら 定期購読のご案内

白水社の新刊

まいにちふれるフランス語手帳2026

まいにちふれるフランス語手帳2026

詳しくはこちら

白水社の新刊

「フランス文学」はいかに創られたか

「フランス文学」はいかに創られたか

詳しくはこちら

ランキング

閉じる