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釣馨 + Ghislain MOUTON「Dessine-moi un mouton !」

第23回 発売記念トークイベント

ひつじ:昨年(2016年)12月の『日本人が知りたいフランス人の当たり前』発売記念トークイベントにはコアなフランス好きの方々が集ってくださいました。会場で本を買ってくださった方も多かったですね。

フレンチブルーム(以下FB):司会を引き受けてくれた『ふらんす』前編集長の丸山さんにも感謝です。ネットでの呼びかけに応じて来て下さった方も多く、学生のころにフランス語をやっていたのでもう一度始めたいという方もいらっしゃいました。読者の顔が可視化されるのはネットの時代ならではですね。

ひつじ:トークイベントに使わせていただいた飯田橋のカフェバー、Atypiqueも素敵なお店でしたね。フランス文化を広めるために、大学のフランス語の先生が始められたお店なんですよ!

FB:やはり、女性の参加者が多かったですね。フランス文化に明確なイメージを持っていて、かつ知的好奇心が旺盛な層は特に30~50代の女性でしょうか。フランスの文学、映画、音楽の洗礼を受けた世代でもありますね。

ひつじ:フランス文化の話をするときは、あまり憧れの気持ちや幻想を壊してはいけないですよね。ただでさえ、フランスのイメージを壊すような事件が次々と起こっていますから。『フラ当た』のポイントは、日本人のフランス文化に対する幻想をなぞりながら、会話編ではそれをひっくり返すような、クリシェとは異なるフランスの多様な側面を見せることです。

FB:トークイベントでは、FRENCH BLOOM NETを始めた経緯について話すことにもなりました。特に東日本大震災のときにTwitterのフォロワーが急増したのですが、あのときは日本語の情報が少なく、日本語以外の情報を求めていた人が殺到している感じでした。特に原発大国のフランス経由の情報が貴重でした。英語だけでなく多様な言語を学ぶ必要性を実感したときでした。

ひつじ:『フラ当た』は100の質問から構成されていますが、近いうちに追加のネタを紹介できそうです。最近、フランスの冷凍食品ブランド、ピカールの専門店が日本に上陸しましたが、フランス人と冷凍食品というテーマも面白いですよ。

FB:トークイベントでは、最近のフランスの時代的な変わり目を何に感じましたか、という質問もありました。ユーロが導入された2000年前後から変わった印象があり、書店や郵便局で「欲しければ売ってやるよ」という態度から、向こうから「何をお求めですか?」と尋ねてくるという、特にサービスに関する態度がドラスティックに変わったと、もうひとりの著者の武内さんが答えていました。

ひつじ:最近は時代の変わり目どころか、全く先が読めなくなっている感じですね。イギリスのEU離脱、そして米大統領選でのトランプ氏の勝利を経て、今年の4月の仏大統領選挙が俄然注目を集めています。

FB:そうですね。卑近なところでは、フランスの消防士と農夫の話も盛り上がりましたね。『フラ当た』では革命記念日前夜の人気イベント、「消防士と一緒にダンスパーティ」を取り上げました。鍛え上げた肉体をアピールした「消防士カレンダー」もあっという間に売り切れるそうですが、最近ネットでフランス農夫のカレンダーが人気になっていると話題になっていました。

ひつじ:僕の消防士の友人はムキムキですが、フランスでムキムキのカッコいい農夫には会ったことがないですね(笑)。

FB:また、『フラ当た』をその場で読んでいた参加者の方が、オニオンスープが出てくる章で、oignonとognonどっちだっけ、と綴りに反応してくださいました。綴り字改革が教科書に適用されたことが、昨年2月に話題になりましたが、発音に準じた綴りが好ましいとされました。

ひつじ:この本ではもちろん oignon のままです。こちらの綴りになじんでますからね。フランスの冬といえば、温かいオニオンスープですね。『フラ当た』ではスパイス入りのホットワインも話題にしていますが、これもクリスマスの時期の定番ですね。

FB:そう言えば、ひつじさんは沖縄で毎年クリスマスにホットワインのイベントをやっているんですよね。

ひつじ:沖縄ではイベントを通して顔の見える関係がたくさんできているんですが、東京のトークイベントで、沖縄以外の人たちもブログを読んでくれているんだと実感しました。僕のブログを愛読しているという横浜在住の女性が来てくださいました。昔の記事で書いたことも覚えてくれていて、ひつじ年に作った「ひつじカレンダー」まで購入してもらっていました。遠く離れた読者の顔が見えたことで、ブロガーとして自覚を新たにしました。生まれて初めて「サインをください」って頼まれたしね(笑)。

FB:男性の方にもサインを求められていましたね。私と同じく、初めて買ったアルバムがミシェル・ポルナレフだったという方でした。

ひつじ:残念なことに、ちょうどポルナレフで盛り上がった日の翌日に彼が肺血栓症 embolie pulmonaire でヤバいというニュースが入ってきました。

FB:現時点で、コンサートのキャンセルを正当化するためのガセネタだったという情報も流れていますが、真相はいかに。ところで、ひつじさんがサインに添えていたメッセージは何でしたっけ?

ひつじ:フランス語で“La vie est une fête!”です。僕は「楽しむこと、人を楽しませること」をモットーにしているので。

FB:ひつじさんらしいですね。人が集まる場所には「楽しさ」が不可欠ですよね。

ひつじ:懲りずにまたトークイベントを企画しますので、ぜひ遊びに来てくださいね!

◇初出=『ふらんす』2017年2月号

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著者略歴

  1. 釣馨(つり・かおる)

    神戸大学他非常勤講師。仏文学・比較文学。FRENCH BLOOM NET 主宰。

  2. Ghislain MOUTON(ジスラン・ムートン)

    琉球大学非常勤講師、ひつじフランス語教室代表。

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