第2回 「街角のフランス語」を探しに行こう
フレンチブルーム こんにちは。前回はひつじさんが制作した話題のアプリSpotfrenchを紹介しました。街角で見つけたフランス語をマッピングするアプリです。今回はその具体的な例を見てみましょう。ひつじさん、「街角のフランス語」の例を何か挙げていただけますか?
ひつじ Bonjour ! まず間違い探しからいきましょうか。これなんかどや!
フレンチブルーム みなさん、どこが間違っているかわかりますか? これを考えた人は英語式に形容詞を名詞の前にそのままつけてしまったのでしょうか。
ひつじ 正しく書けば、la réduction spécialeになりますね。性数を一致させる必要があります。意味は特別割引です。
フレンチブルーム フランス語の形容詞は名詞の後ろにつけるのが原則ですね。
ひつじ でも、お店の名前の場合は比較的自由に、前につけたり、後ろにつけたりしますよ。いちばん下に筆記体で小さく書かれているので読みにくいですが、enrécréは子供服のブランドです。soldesもバーゲンの時期に街でよく目にする言葉ですね。
フレンチブルーム 次は何でしょうか。
ひつじ メゾンは日本ではマンションの名前によく使われますね。フランス語では「家」のことです。これはbellではなく、belleが正しい形です。
フレンチブルーム ところで、ひつじさん、『めぞん一刻』って知っていますか。
ひつじ もちろんです。フランス語のタイトルは<< Juliette je t'aime >>といいます。
フレンチブルーム さすがですね。特に私の世代は「メゾン」という言葉がこのマンガによって強く印象づけられています。「マ・メゾン」(ma maison)というレストランと「豆蔵(まめぞう)」という居酒屋を間違えるというエピソードもありました(笑)。
ひつじ 日本と違うのは、フランスでは集合住宅に名前をつけることはほとんどないですね。代わりに、わかりやすく番地を示すプレート(Plaque de numéro de rue)がついています。
フレンチブルーム 最後は何でしょうか。
ひつじ 京都の一乗寺で見つけたマンションです。Deux belles fleurs ――つづりもふりがなも完璧です!
《文法&ボキャブラリー》
★ la réduction spéciale
フランス語では常に性と数を意識しましょう。特別割引に対して、特別価格だと le prix spécial になります。
★ Soldes
フランス語でバーゲンのことですが、よく話題にのぼる言葉なので、acheter un pull / une robe en soldes (バーゲンでセーター / ワンピースを買う)、profiter des soldes (バーゲンを活用する=バーゲンに行く)、le premier jour des soldes d'hiver (冬のバーゲンの初日)などの表現を覚えたいですね。
★ Belle maison
belleは女性名詞につく形で、男性形はbeauです。大きく形が変わりますね。男性名詞につけてみると、beau temps(いい天気)。Après la pluie, le beau temps(雨のあとはいい天気=苦あれば楽あり)ということわざもいっしょに覚えるといいですね。19世紀の小説家、モーパッサンに<< Bel-Ami >>(美貌の男友だち)という作品がありますが、belは母音または無音のhで始まる男性名詞につく形です。これを男性第2形と言います。他にはnouveau, vieuxなどが、このパターンで変化します。
【便利なサイトとアプリ】
□Spotfrench(App Storeから無料ダウンロード。現在iPhone, iPad, iPodのみ利用可能)
地図に連携して、写真におさめた「街角のフランス語」をマッピングできる利用者参加型アプリ。
□Bescherelle ta mère(http://bescherelletamere.fr/)
今回は間違い探しをしましたが、もちろんフランス人だってフランス語を間違えます。フランス語の間違いを指摘しながら楽しもう、というコンセプトのブログがあります。フランスで2014年のベストブログに選ばれたそうです。
◇初出=『ふらんす』2015年5月号