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姫田麻利子+Steve MARSHALL「友だちだよね? フランス語と英語のちがうところ」

第9回 関係代名詞

 英語を先に習った人がフランス語を勉強していて混乱すること、フランス語の方が得意な人が英語を使う時に間違いやすいことを整理しています。今月は、関係代名詞についてです。

今月の表現
1)誰か車を売りたがってる人、知ってる?
 仏 Tu connais quelquʼun qui veut vendre sa voiture ?
 英 Do you know anyone who wants to sell their car?
2)湖に面したホテルがいいな。
 仏 Je préfère un hôtel qui donne sur le lac.
 英 I prefer a hotel that faces the lake.
3)いとこがよく知っている弁護士に会うことになっている。
 仏 Je vais rencontrer lʼavocat que mon cousin connaît bien.
 英 Iʼm going to see the lawyer( who) my cousin knows well.
4)彼は犬が壊したソファーを修理した。
 仏 Il a réparé le canapé que son chien avait détruit.
 英 He repaired the sofa( that/which) the dog had destroyed.

Mariko:先に英語を勉強した人が、フランス語の関係代名詞で混乱するところは、英語の関係代名詞は、説明を加えたい名詞(先行詞)が人かモノかで違ってくるけど、フランス語の関係代名詞は、先行詞が人かモノかの区別なく、続く文の中で主語の役割か、目的語の役割かで使い分けることかな。

Steve:フランス語は、疑問代名詞の時は、qui とque は人かモノかの区別なのに、関係代名詞のqui とque は、人かモノかの区別じゃないんだよね。

Mariko:私には、英語の関係代名詞はすごく複雑に感じる。英語のwho で、フランス語のqui の意味のものは、大丈夫。でも、先行詞がモノで、続く説明の中で主語の時、フランス語はqui だけど、英語だと何を使うか迷う。

Steve:フランス語の関係代名詞qui とque を、英語と比べて考えるなら、英語には人かモノかの区別があるから、少なくとも4 組の例文をあげないといけないね。

Mariko:しかも、英語の関係代名詞は、which でもthat でもいいとか、whom の代わりにwho でもいいとか、なくてもいいとかあるでしょ?……じゃあ、まず、« Tu connais quelqu'un qui veut vendre sa voiture ? » これを英語で言うなら、“Do you know anyone who wants to sell his car?” でいい?

Steve:their car だよ。

Mariko:え、そこ? なんで? 動詞は三人称単数形なのに?

Steve:anyoneの所有格はtheir。あと、そういう人がいることを予想して聞いてるなら、“Do you know someone who wants to sell their car?” も言えるよ……じゃあ、次の問題です、« Je préfère un hôtel qui donne sur le lac. » を英語にして。

Mariko:“I prefer a hotel which faces the lake.” で合ってる? ふだんの会話のなかで、このwhich をあんまり聞かない気がするから、自信がない。

Steve:イギリス英語なら which をよく使うけれど、北米だと“I prefer a hotel that faces the lake.” がふつうだね。

Mariko:あれ、その文なら、“I prefer a hotel facing the lake.” と言うことも多くない?

Steve:その方がシンプルできれいでしょ。

Mariko:フランス語では、そういう風に現在分詞を付けるのは、だいたい書き言葉の時。英語では、話し言葉でもその言い方するよね?

Steve:するよ。

Mariko:じゃあ次は、先行詞が人で、続く文の中でそれが目的語の役割の場合……« Je vais rencontrer lʼavocat que mon cousin connaît bien. » を英語にして。

Steve:lʼavocat を限定するんだよね。“Iʼm going to see the lawyer who my cousin knows well.” か、“Iʼm going to see the lawyer whom my cousin knows well.” この関係代名詞は省略できるよ。

Mariko:目的語の場合、英語では、先行詞が人でもモノでも、関係代名詞の省略が可能なの?

Steve:そう。フランス語では関係代名詞のque も、接続詞のthat にあたるque も省略できないけどね。

Mariko:whom って使う?

Steve:現代の英語ではwho しか使わない人が多いけど、フォーマルな文を書く時には、whom の方がいいと思う。

Mariko:もう、1 つに決めてほしいよ……。人なら主語でも目的語でもwho、モノなら主語でも目的語でもwhich とか。ええと、次は、先行詞がモノで、目的語の場合。« Il a réparé le canapé que son chien avait détruit. » このque も、that でもwhich でもいいでしょ?

Steve:“He repaired the sofa that the dog had destroyed.” でも、that の代わりにwhich でもいいけど、カンマなしだと彼は他にもソファを持っていて、「犬が壊した方のソファ」と言ってる感じ。“He repaired the sofa, which the dog had destroyed.” と、カンマを付けると「ソファを修理した、犬が壊したから」と補足的に説明しておく感じ。この言い方は、which しかできないよ。

Mariko:あと、フランス語の関係代名詞にはdont があるのよね……。

Steve:そうだった、dont は難しい! いつもwhose と同じ意味じゃないし。“I know a French professor whose daughter is teaching Japanese in Toronto.” は、« Je connais un professeur dont la fille enseigne le japonais à Toronto. » だけど、“Iʼm going to lend you the book we talked about in class.” をフランス語にする時もdont 使うよね。

Mariko:うん。« Je vais te prêter le livre dont on a parlé en classe. » ふだんの会話でも、parler de(~について話す)とかavoir besoin de(~を必要としている)といっしょによく使うかも。

【今月のまとめ】
フランス語では、先行詞が、続く説明の中で主語なら関係代名詞qui、目的語ならque。英語で、qui に相当するのは、先行詞が人ならwho、モノならthat。queに相当する関係代名詞は省略可。

《カナダ英語圏 フランス語ランドスケープ》
 バンクーバーの街では、ほとんどフランス語を見ないとお話ししてきましたが、商品表示のほかにも、毎日見かけるフランス語がありました! カナダ郵便局の車の表記です。


 ◇初出=『ふらんす』2017年12月号

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著者略歴

  1. 姫田麻利子(ひめた・まりこ)

    大東文化大学教授。仏語教育・異文化間教育

  2. Steve MARSHALL(スティーブ・マーシャル)

    Simon Fraser University 教育学部准教授。著書 Advance in Academic Writing

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