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「マンガ家デビューはフランスで」Kim Bedenne

第5回 フランス人によるマンガの初日本連載!

 2022年3月から、フランス人マンガ家Shonenの作品の連載が講談社の雑誌で開始されました。フランス人作家のマンガが日本の大手出版社の雑誌にライセンスされ、連載されるのはおそらく史上初の出来事です。この作品こそKi-oonのオリジナル作品「Outlaw Players」(日本語タイトル「超級装備で無双して、異世界王に俺はなる!- Outlaw Players」)で、マンガ業界で知名度の高い「月刊少年シリウス」本誌で連載されています。

 フランスでプロのマンガ家が活躍すること自体に驚くかもしれませんが、いまやマンガを読んで育った若者が多いフランスでは、マンガ家を目指す人が出てくるのは自然な流れです。ただ、マンガ雑誌がなく、作品を発表する機会がありませんでした。しかし、2000年代半ばから少しずつフランス人作家の作品がフランスのマンガ出版社により単行本として刊行され始めます。当時最も注目された作品「Dreamland」は今でも多くのファンを集めています。

 とはいえ、若手作家を育てる雑誌という手段がなく、日本のマンガと同レベルの作品を生み出すのにも、読者に受け入れてもらうのにも時間がかかりました。マンガとフランスを合わせた「マンフラ」という単語が生まれたように、フランスのマンガはマンガとは別物という扱いでした。文化的な背景も異なるため、絵柄、コマ割り、話作りにマンガ以外のバンド・デシネやアメコミの影響を受けることもあり、典型的なマンガと違う味を出す作品が珍しくないのも事実です。

 2010年代になると、個性を生かしつつ、高い画力で物語を作り出す力を備えている作者が増加、出版社は慎重ながらも出版契約の点数を増やしました。スチームパンクファンタジーの世界を描く「City Hall」、ゲームを原作にした「Wakfu」、古代ギリシアの神話をコメディにした「Save me Pythie」など、様々なマンガが店頭で並ぶようになりました。Ki-oonもフランスのマンガ制作を支えるべく、2016年にマンガコンテスト「Tremplin Ki-oon トランプランキューン」を開き、優勝者の作品の刊行を開始しました。そのコンテストの第一弾から生まれた作品「グリーンメカニック」は今でも人気作品として続巻中です。

 さて、「Outlaw Players」は当時既に10年もの経験を積んでいたShonen先生のKi-oonへの持ち込み企画でした。ゲームの世界の中に閉じ込められた少年、個性溢れたプレイヤー、巨大な敵との戦い……。あまりにも魅力的だったので、コンテスト抜きで刊行を決定しました。有名なアニメスタジオ「ゴンゾ」によるPV制作をはじめ、大規模な宣伝を展開しながら2016年のジャパンエキスポ(欧州最大のマンガイベント)のタイミングに合わせ発売しました。作戦が功を奏し、ジャンパンエキスポ2016年度の最優秀国際マンガ賞を受賞しました。何より嬉しかったのは、読者の反応を見ると「マンフラ」ではなく「マンガ」として受け入れられていたことです。ギャグのネタは多少フランス人らしいですが、絵柄も話の構成もキャラ作りも日本のマンガと変わりありません。

 Shonen先生自身はマンガのファンで、大暮維人を始め、三浦建太郎、つくしあきひと、三輪士郎など、多くの日本人作家に影響を受けました。ゲームも好きで、東洋と西洋のRPGの要素を組み合わせ、自分の世界を作っています。22歳から独学でマンガを学び、最初は同人誌で作品を発表していました。2006年、ちょうど「Dreamland」1巻が発売されたころ、Shonen先生はジャパンエキスポで編集者に声をかけられ、プロデビューを果たしました。

 それから16年が経ち、4作目となる「Outlaw Players」を執筆しています。ベテラン作家となったと言っても過言ではないでしょう。フランスにはアシスタントが存在しないこともあり、今でも一人で作画をしますが、その筆は速く、月刊連載のペースを保っています。つまり制作は順調、現在11巻まで出ています。 その作品が日本で発表されることになったのはシリウスの編集者との出会いのおかげです。日本人作家によるKi-oonのオリジナル作品は既に「虎鶫─TSUGUMI PROJECT」、「Lost Children」、「ノイズ」などが連載されている中、Ki-oonと日本の編集部とのつながりが強まり、フランス人作家の存在をアピールするチャンスが増え、人気雑誌「シリウス」からも声がかかりました。シリウスは「転生したらスライムだった件」や「ライドンキング」のような「異世界転生モノ」が強く、そのジャンルの作品を積極的に増やす時期でした。また、海外にも目を向ける若い世代の編集者がいることもあり、フランスの人気作品に興味を持つようになったのです。 日本でフランスのマンガというと、「ラディアン」が日本のバンド・デシネ専門雑誌「ユーロマンガ」に掲載、2015年から単行本も刊行されていますが、一般のマンガ雑誌での連載は「Outlaw Players」が初めてです。日本人にもフランスのマンガが「マンガ」として認められたということです。「ラディアン」も担当する優秀な翻訳者の原正人氏が日本語訳を手がけ、シリウスの編集者が他の少年マンガと変わらない形に整えています。フランスの読者から見ても日本の読者から見ても、それはマンガです。「Outlaw Players」が日本でも話題になれば、フランス人マンガ家にとって、マンガの世界への新しい入り口になるでしょう。

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キム・ブデン:Ki-oon東京オフィス代表 TWITTERアカウント@Kim_Ki_oon メール:mochikomi@ki-oon.com

◇初出=『ふらんす』2022年8月号

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著者略歴

  1. Kim Bedenne(キム・ブデン)

    編集者。講談社国際事業局、仏漫画出版社PIKAを経て2015年よりKi-oon在日オフィス代表

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