第3回 サルはその母の目では鹿だ
©Peri.
القرد في عين أمه غزال
(エルエルドゥ フェエーン オンモ ガザール)
訳:サルはその母の目では鹿だ
今回も動物を扱った、アラブ人がよく使うことわざの紹介です。これはどういう意味でしょうか。アラブ社会で「サル」と「鹿」がそれぞれどう判断されるかが分かれば、このことわざが伝えるメッセージも分かるでしょう。
「サル」は日本では、ずる賢い、知性が高い動物というイメージでしょうか。アラブでは、落ち着きがない子どもなどを指したりもしますが、一般的に「醜さ」を代表する動物です。 一方、鹿は、日本では山地で繁殖して増えてしまって、迷惑な存在になってしまっていますが、アラブでは「外見の良さ」「スタイルの良さ」「美しさ」等を象徴しています。 これらの情報を踏まえて意味が推測できませんか。つまり、「醜くても、欠陥があっても、好きな人の目には完璧に映る」という意味ですね。日本にも「あばたもえくぼ」という近いことわざがありますね。ただ、アラブのことわざの場合は、身内に対してよく使います。日本では、家族のことを控えめに謙虚に話しますが、アラブ世界では、とにかく自慢します。たとえば、お見合いの場面でこんなふうに使います。
男性の母:うちのアリーは何て見事な会社員よ。
男性:……(恥ずかしそうにしている)
女性の母:あら、そうですか。
男性の母:性格も良いし、ほら、シャイでしょう? なんて良い子なんでしょう!
女性側全員の心の声:(サルはその母の目には鹿!)