第2回 盗むならラクダを、恋に落ちるなら月(のようにきれいな人)を
©Peri.
إن سرقت اسرق جمل ،وإن عشقت اعشق قمر
(イン サラクタ イスラク ジャマル、ワイン アシャクタ イアシャク カマル)
訳:盗むならラクダを、恋に落ちるなら月(のようにきれいな人)を
日本の文化では「過ぎたるは猶及ばざるが如し」や「腹八分目」など、やりすぎは良くないという考え方が当たり前だと思いませんか。今回のことわざはあなたの常識をひっくり返すかもしれません。今回は、日本語に当てはまることわざがなく、アラブ特有のことわざを紹介したいと思います。
上に書いてある和訳を読んでも何のことか分かりませんよね。これは、善であることでも悪であることでも、思いっきりやれ! ということわざです。つまりは中途半端にするのはやめるべきと伝えています。もともとアラブ社会では、窃盗犯の刑は物の価値で決まるわけではなかったので、万が一盗む場合は、安い物を盗むのではなく、(どうせ刑を受けるのだから)価値の高い「ラクダ」を盗みなさい、という発想ですね。
また、恋愛に関しても同じですね。恋に落ちることは、けして、喜びに満ちた楽しい世界ばかりではなく、喧嘩したり、淋しい思いをしたり、別れて辛かったりもします。そのような苦しみを経験することになるので、きれいな人が良い。つまり、苦しい目に合う物事は中途半端ではなく、欲張って思いっきりやるのが良い、というわけです。
日本語には、やるべきことをやらねば、危ないことでも挑戦せねば、などのことわざがたくさんありますが、このようなことわざはありませんね。やはり、悪いことはしてはいけないと考える真面目な面を反映していますが、「悪を続ける」という意味合いだけを考えると、「毒を食らわば皿まで」が同じですね。日本語では、「毒を食べること」は「悪いこと」を表しており、さりげなく「自業自得」の意味合いが含まれていると私には読めます。