第1回 猫が席を外したら、遊べ、ネズミよ!
第1回は、アラブだけでなく、日本や西欧などほとんどの文化に存在することわざをご紹介します。
©Peri.
إن غاب القط العب يا فار
(イン ガーベルオット エルアブ ヤファール)
訳:猫が席を外したら、遊べ、ネズミよ!
日本のことわざでいうと?:鬼の居ぬ間に洗濯
見張り役がいなければ、やりたい放題だ、というのが大まかな意味で、日本語でもアラビア語でも大体同じシチュエーションで使われます。
アラブのことわざでは動物が登場することは珍しくないですが、特にエジプトでは猫が登場することが多く、元気のよさを表すことが多いです。猫はアラブ世界ではかわいがられている動物で、このことわざでは強い人物、権力者を表しています。一方、ネズミは臆病者という文化的なイメージが強くて、ここでは、見張らないとちゃんとしないものを表しています。
さて、アラブのことわざと日本のことわざとの違いがあります。ことばづかいにもう一度注目しましょう。アラビア語では「遊ぶ」という動詞を使っているのに対して、日本語では「洗濯」が使われています。この洗濯は心の洗濯、つまりリフレッシュという意味で、単に仕事をさぼってしまう、のとは違います。
アラブのことわざは、「ボスがいなければ部下が仕事しない」や「親が留守の時、子どもが勉強しない」のようなネガティブな時しか使いません。また、ネズミ、つまり、遊ぶ人がいうのではなく、猫のセリフになります。例えば、こんな会話を紹介しましょう。
母:部屋の片づけを頼んだのに、もっと散らかっているわね
娘:...
母:勉強でもしてたの?
娘:好きなドラマ、テレビでやってて...
母:あーあ、猫がいない間にネズミが遊べってことね。
という流れになります。
それに対して、「鬼の居ぬ間に洗濯」は、ポジティブな意味や真面目な場面でも使います。この前、日本人の友達が「子どもを寝かしつけてやっと仕事できる。鬼の居ぬ間に洗濯だ」と言ったときに、こういう真面目な使い方があるんだと驚いたことがあります。日本人は働きバチだ、と確信しました。