「完璧」な日本の裏側にあるもの 村松恭平

Karyn NISHIMURA-POUPÉE, Japon, la face cachée de la perfection(Éditions Tallandier, 2023)、邦訳『日本 「完璧」な国の裏側』(西村カリン著、村松恭平訳、河出書房新社、2026)
Japon, la face cachée de la per-fectionはフランス人向けに書かれた日本論だ。多くの国が日本に「完璧な国」というイメージを抱くなか、日本に20年以上暮らす西村カリン記者が日本の優れた面を称賛しながらその陰に隠れた面に光を当てた。長年の取材活動をベースに政治からメディア、司法、教育、働き方、人間関係、ポピュラーカルチャーまで幅広いテーマが取り上げられており、日本人自身が気付いていない、あるいは見て見ぬ振りをしている様々な問題が鋭く指摘されている。
本書がほかの無数の日本論と大きく異なるのは、そしてフランスに関心を持つ人にとって特に興味深いのは、日本とフランスの比較が多く提示されている点だ。たとえば、日本の日刊紙の「利点は事実が簡潔に語られていることで、欠点はアングル(角度)・文体・色合いに欠けることだ。フランスで同じ日に同じテーマについて、リベラシオン紙とル・モンド紙の第一面の見出しが同じになるなど想像できようか?」(第3章「メディア」)、「日本人は、フランスで15歳〜64歳の45パーセント以上が大麻を使用したことがあると知るとびっくり仰天する」(第4章「世界で最も安全な国?)、「審理の流れは理論上はフランスのそれにかなり近いが、様々な事件を追って東京地方裁判所の法廷を見て回ったところ、現実は多くの点で異なっていた」(第5章「司法」)といった指摘はとりわけ印象的だった。両国を比較することで問題をより客観的に、より深く考察できよう。
本書ではデータに基づいた考察がなされているだけでなく、著者が感じてきた喜びや悲しみも率直に表現されている。「私は時々、日本に移住し、社会に極めてうまく溶け込んでいるミックスの子どもたちと一緒にとても幸せな家庭生活を送り、どこでもまったく差別を受けていないフランス人として、自分が報告すべき内容を信じることがなかなかできない」(第11章「移民」)。こうして、日本に暮らす外国人だけが直面する問題にも気付かせてくれる。
最大の読みどころは第5章の終盤の、死刑判決を受けた袴田巌氏と彼を支えた姉・秀子氏、支援者たちの何十年にも亘る司法との闘いである。著者もジャーナリストとしてのみならず一人の人間として巌氏に何度も会い、法廷に足を運び、検察の不条理に怒り、声を上げてきた。この不屈の闘いの様子が繊細かつ圧倒的な筆致で描かれている。本書の改訂版(2025年刊)では巌氏の無罪がついに確定したことが追記された ─ 今年1月に刊行された『日本 「完璧」な国の裏側』は、この最新版の翻訳である。



