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根井雅弘「英語原典で読む経済学史」

第19回 F・A・ハイエクの名言(1)

"The development of Lord Keynes's theories started from the correct insight that the regular cause of extensive unemployment is real wages that are too high. The next step consisted in the proposition that a direct lowering of money wages could be brought about only by a struggle so painful and prolonged that it could not be contemplated. Hence he concluded that real wages must be lowered by the process lowering the value of money." 
F.A.Hayek(1960)

 F・A・ハイエクは、第二次世界大戦後、各国におけるケインズ政策の採用がインフレを招いた元凶であるという主張を繰り返したが、たとえケインズ理論の理解としてはお粗末でも、ハイエクの主張は保守派には都合のよいお墨付きを与えることになった。この種の主張は、一流とは言い難い新聞や雑誌にいくらでも見つけることができる。その意味では、ハイエクの影響力は大きかったと言える。

 「ケインズ卿の理論の発展は、広範な失業の通常の原因は、実質賃金が高すぎることにあるという正しい洞察から出発した。次の段階は、貨幣賃金を直接引き下げることは、あまりにも痛みを伴い、長期にわたる闘争によってしか実現できないので、それを意図することはできないという主張に存する。それゆえ、ケインズは、実質賃金は貨幣価値を低める過程によって下落させるべきであると結論したのである。」

F.A.Hayek, The Constitution of Liberty, 1960,p.280.

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著者略歴

  1. 根井雅弘(ねい・まさひろ)

    1962年生まれ。1985年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。1990年京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。専門は現代経済思想史。『定本 現代イギリス経済学の群像』(白水社)、『経済学の歴史』、『経済学再入門』(以上、講談社学術文庫)、『ガルブレイス』、『ケインズを読み直す』、『英語原典で読む経済学史』『英語原典で読む現代経済学』(以上、白水社)、『経済学者の勉強術』、『現代経済思想史講義』(以上、人文書院)他。

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