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インタビュー「ブールヴァール・デ・ゼール、フレンチ・ミレニアルの等身大バンド」丸山有美


フローラン・ダスク(左)とシルヴァン・デュトゥ

 スペインとの国境近く、オート=ピレネー県タルブを拠点に音楽活動を展開するブールヴァール・デ・ゼールBoulevard des airs。「楽曲大通り」というグループ名は、Boulevard désert(ひと気がない道)という言葉遊びにもなっている。2004年に地元高校の友人同士で結成され、2011年にデビューシングルを発表するや、スペイン的な要素にブラスの効いた“揚がる” サウンドとエネルギッシュなパフォーマンスで瞬く間に知名度を上げた。BDAは、今やフランスのミレニアル世代を代表するバンドとして各地のフェスやコンサートに引っ張りだこだ。6月発売の日本デビューアルバム『旅立ちの朝』(リスペクトレコード)は、本国では3枚目のオリジナルアルバムにあたる。同月、コンサートとプロモーションで4人のメンバーが来日し、シルヴァン・デュトゥSylvain Duthu(Vo.)とフローラン・ダスクFlorent Dasque(Gr. Vo.)に話を聞くことができた。

 アルバムに一貫して旅への憧れや日常の閉塞感が歌われることについて尋ねると、「後からひとに言われて、自分が旅の歌ばかり書いていたことに気がついた」とシルヴァンが苦笑した。「ぼくらはテーマを設けてアルバムを作らないから。その時心を捉えているものを各々が持ち寄って、みんなが気にいるものを選ぶんだ」とフローランが付け加えた。また今回ルフランにスペイン語歌詞を取り入れたことは、もちろん彼らの拠点の地理的位置も無関係ではないが、フラメンコ界でも活躍していた紅一点のメンバー(後に脱退)がスペイン語話者だったことやスペイン人ツアースタッフとの交流が大きく影響したという。「人との出会いや旅が音楽にもたらすものを分かち合いたい」とシルヴァンは語る。過去すべてのアルバムの作詞、作曲、演奏、アレンジ、プロデュースを自分たちで手がけ、タルブのホームスタジオで録音してきた。「地元に執着はないけど、誰からも指図されずにじっくり創作できるのがいい。家族や友だち、見慣れた景色に囲まれてると落ち着くし」というシルヴァンに「家賃も安い!」とフローランがおどけた。「用があれば飛行機ですぐパリに行けるし」ということばには、彼らの歌同様、どこまでも自由に自然体でいることを優先する価値観がうかがえる。

 本国で20万枚以上のセールスを記録したアルバム『旅立ちの朝』には、ZAZをゲストヴォーカルに迎えた「旅立ちの朝(Demain debon matin)」など計13曲、日本盤特典としてボーナストラック計4曲が収録されている。

(まるやま・あみ/フリー編集者・ライター・翻訳者。前『ふらんす』編集長。共著『メディアの本分』)


ブールヴァール・デ・ゼール 『旅立ちの朝』
(日本独自盤、歌詞・対訳・解説付き、ボーナストラック4曲収録)
リスペクトレコード
定価2600円(税込)

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