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「アクチュアリテ アート&スペクタクル」岡田Victoria朋子

2017年5月号 フェルメール展@ルーヴル美術館

Johannes Vermeer, La Dentellière, vers 1669-1670. Paris, musée du Louvre,
département des Peintures
© RMN-Grand Palais (musée du Louvre) /
Gérard Blot
Johannes Vermeer, La Dentellière, vers
1669-1670. Paris, musée du Louvre,
département des Peintures
© RMN-Grand Palais (musée du Louvre) /
Gérard Blot

 

フェルメール展@ルーヴル美術館

 この春の目玉展覧会は何と言ってもルーヴルの「フェルメールとオランダ風俗絵画の巨匠たち」展だ(5 月 22 日まで)。世界に散らばるフェルメール作品の約 3分の 1 にあたる 12 点が、1966 年以来一堂に会する画期的なもので、《天秤を持つ女》《レースを編む女》《天文学者》《地理学者》などの名作がズラリ。加えて、ヤン・ステーン、ヘラルド・テル・ボルフ、ガブリエル・メツー、ピーテル・デ・ホーホ、フランス・ファン・ミーリスなどの風俗画を並置して、フェルメールがどれだけ同時代の画家たちとテーマや作風を分かち合っていたかを検証する機会ともなっている。ルーヴル、ダブリン(アイルランド)とワシントン DC(米)のナショナルギャラリーの共催だが、フランスの乳製品企業のキャッチマークとなっている有名な《牛乳を注ぐ女》がルーヴルのみの展示ということもあって、開幕以来、連日数時間待ちの長蛇の列が。「ライデンコレクション名作展」「ヴァランタン・ド・ブーローニュ展」(いずれも 5 月 22 日まで)、「オランダ黄金期の風俗デッサン展」(6 月 12 日まで)も併催。

 

ヴェネチア展@パリ市立美術館

 ルーヴルが 17 世紀に焦点を当てる一方、パリ市立美術館では 18 世紀を主役にたてている。マレ地区の、かつての貴族館を利用した 18 世紀専門のコニャック・ジェイ美術館では、ヴェネチアの祝祭をテーマにした「セレニッシマ(最も高貴なるもの)展」が 6 月 25 日まで開催中。民衆と貴族の祝祭、舞台での祝祭、権力とスペクタクル、カーニヴァルという構成で、酒場や貴族屋敷での集会、演劇とオペラ、政治行為としての華やかな国家レセプション、1 年に 1 度だけなんでも許されるこのお祭りをテーマに、ヴェネチア共和国のかつての栄華を偲ぶ。屋根裏に当たるスペースでは、コスチュームや仮面を着けて写真を撮ることができるコーナーもあり、家族で楽しめる。フェルメール展でもそうだが、音楽が大きな比重を占めていることにも注目したい。

 また、プティ・パレでは「18 世紀芸術シーズン」と銘打って、「ヴァトーからダヴィッドヘ」展(7 月 9 日まで)と、「18 世紀パリ教会絵画展 Le baroque des lumières」を開催している(7 月 16 日まで)。

 

◇初出=『ふらんす』2017年5月号

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著者略歴

  1. 岡田Victoria朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)

    ソルボンヌ大学音楽学博士、同大学院客員研究員。国際音楽評論家協会理事。翻訳家

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