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「アクチュアリテ アート&スペクタクル」岡田Victoria朋子

2017年7月号 「ラ・セーヌ・ミュジカル」オープン

「ラ・セーヌ・ミュジカル」オープン

 パリではここ数年、新しい音楽ホールのオープンが相次いでいる。セーヌ河のSeine に、舞台を意味するScène をかけて命名されたセーヌ・ミュジカル Seine Musicale もその1 つ。パリ16 区の向こう、セーヌ河に浮かぶスガン島は、かつて島全体がルノー自動車の工場として繁栄。工場の閉鎖後、様々な軋轢を経て、いくつものホールを擁する音楽センターの設置が決定し、4 月末にボブ・ディランのコンサートで正式にオープンした。メインは1150 席のクラシック専用ホール。世界中の名だたるクラシックホールを手がける坂茂(ばん しげる)設計による最高の音響を誇る。また、「グランド・セーヌ」と名付けられた4 ~ 6000 席のホールや、リハーサル室、録音専用ホール、レセプションスペースなどの他、ショッピングモール、7200 平米に及ぶ屋上庭園などを兼備。女性指揮者L. エキルベイ率いるインシュラ・オーケストラ他がここを本拠地とし、カウンターテナーPh. ジャルスキーがプロ養成の音楽アカデミーを開校。6 月末にはハービー・ハンコックがジャズライブを行う。フランスでも有数の総合的な音楽発信拠点となることは間違いない(http://www.laseinemusicale.com)。

 

ルドゥーテ展

 

Pierre-Joseph Redouté, Roses trémières, raisins et le lori
cramoisi, 1836 Paris, musée du Louvre, département des
arts graphiques © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) /
Michel Urtado /Service presse/ MVR
Pierre-Joseph Redouté, Roses trémières, raisins et le lori
cramoisi, 1836 Paris, musée du Louvre, département des
arts graphiques © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) /
Michel Urtado /Service presse/ MVR

 

 19 世紀初頭のパリ。現在のサン・ジョルジュ駅を中心とする新界隈「新アテネ La nouvelle Athènes」に多くの芸術家が住んだ。その中にひっそりと佇むロマン派美術館 Musée de la vie romantiqueは、画家アリ・シェフェールのかつてのアトリエ兼自宅で、ショパンやジョルジュ・サンド、ドラクロワなどフランスのロマン派の旗手たちが集った。ここで現在、歴代王妃の庇護を受けた植物学者ルドゥーテRedouté (1759-1840) の展覧会が開かれている。「花画のラファエロ」とあだ名された彼のメイン展覧会は、なんとフランスで初めて。彼は、ナポレオン1 世妃ジョゼフィーヌが育てた薔薇を多く描いたことでとくに有名だが、学術的な価値が高い植物画だけでなく、彼と親交のあった画家たちによる人物画や、花のモチーフをあしらったオブジェの下絵なども堪能できる。10 月1 日まで。

 

◇初出=『ふらんす』2017年7月号

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著者略歴

  1. 岡田Victoria朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)

    ソルボンヌ大学音楽学博士、同大学院客員研究員。国際音楽評論家協会理事。翻訳家

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