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「アクチュアリテ 政治」山口昌子

2017年6月号 フランス社会党の崩壊

フランス社会党の崩壊

 2017年のフランス大統領選(直接選挙、2回投票)は二大政党時代の終焉を計らずも示したが、とくに社会党の崩壊を強く印象付けた。社会党の公認候補のブノワ・アモン前国民教育相は4月23日の1回投票では約6%で5位に沈むという惨状だった。

 社会党が大統領選で決戦投票に進出しなかった例は確かにある。2002年の大統領選だ。この時の決戦投票は再選を狙うジャック・シラク氏VS極右政党・国民戦線のジャン=マリ・ルペン党首(当時)で、「自由、平等、博愛」の仏共和国の旗の下、社会党から共産党、緑の党までが結束し、シラク氏が80%を超す得票率で圧勝した。今回もアモン氏自身敗北を認め、演説で2回投票では上位2人のうち無党派のエマニュエル・マクロン氏への投票を呼びかけ、極右政党・国民戦線のマリーヌ・ルペン党首の当選を阻止するよう訴えた。

 ただ、2002年の大統領選では、1回投票の直前までシラクVS社会党のリオネル・ジョスパン(当時首相)の一騎打ちになるとみられていた。しかもジョスパン氏とルペン氏の1回目の得票率は投票率で0.7%という微差だった。ルペン氏が決戦に進出したのは、高失業率、治安悪化、不法移民の増加などを背景に、公然と人種差別、移民反対を表明するルペン氏に、逆説的にも労働者層や低所得者層の移民や移民2世が共鳴したからだ。

 社会党崩壊の第一歩は、一般的にはほぼ無名だったアモン氏が予備選で公認候補になったことだ。昨秋まではオランド前大統領が再選を狙うと、誰しもが信じて疑わなかった。ところが、オランド氏は選挙公約だった緊縮財政反対、成長率重視の経済政策を3か月で放棄したほか、高失業率解消、購買力向上、原発依存の電力削減などほとんどの公約を反故にし、支持率低下を招き、再選を断念せざるを得なかった。社会党は元来、左派と右派の争いが御家芸でもある。オランド氏の公約反故は、換言するなら伝統的な社会党政策(左派)から中道的政策(右派)に舵を切ったことでもある。1月末の予備選挙で結局、オランド政権の推進役だったマニュエル・ヴァルス前首相(右派)が“フロンド派(党内反乱者)”のアモン氏(左派)に敗北した。

 ジャン=リュック・メランション氏も社会党崩壊の立役者の1人だ。社会党左派だったメランション氏は左翼党を戧設して社会党から独立。さらに大統領選では「服従しないフランス」を立ち上げ、アモン氏との共闘も一蹴し、19%の得票率を獲得した。

 そして、社会党に決定的な引導を渡したのがマクロン氏だ。オランド政権の経済相をさっさと辞任し、右派でも左派でもない「前進!」を率いて、社会党支持者のみならず右派支持者も引き連れて、大統領への道をばく進した。

 

◇初出=『ふらんす』2017年6月号

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著者略歴

  1. 山口昌子(やまぐち・しょうこ)

    産經新聞前パリ支局長。著書『フランス流テロとの戦い方』『パリの福澤諭吉』

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