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「アクチュアリテ 政治」山口昌子

2017年4月号 金銭スキャンダルは最大のタブー

金銭スキャンダルは最大のタブー

 フランスの大統領選(直接選挙、2 回投票= 4 月23 日、5 月7 日)を前につくづく思ったのは、フランス政界では不倫などは不問に付すが金銭スキャンダルは致命傷になりかねないということだ。右派政党・共和党(LR)の公認候補のフランソワ・フィヨン元首相が、妻のペネロープ夫人や子弟2 人を議員助手としてカラ雇用していた疑惑事件が発生して以来、失速したことがその好例だ。

 すっぱ抜きで知られる風刺週刊紙カナル・アンシェネが1 月末から連続報道した事件は、ペネロープ夫人が雑誌社からカラ雇用されていた疑惑も加わり、ニクソン米大統領が辞任に追い込まれたウォーター・ゲート事件になぞられ、「ペネロープ・ゲート事件」と呼ばれ、国中の関心の的に。カラ雇用手当が総額約100 万ユーロ(日本円で約1 憶2000 万円)という巨額だったこともあり、当局も夫妻や子弟を尋問するなど司法問題に発展した。

 一時はトップだった支持率も急低下、2月中旬の各種調査では1 回投票で極右政党・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首、右派でも左派でも政党でもない「前進! En marche !」のリーダー、エマニュエル・マクロン前経済相に次ぐ3 位となり、上位2 人で争う2 回投票(決戦投票)にも臨めないという結果が出た。

 フィヨン氏はテレビ会見などで、「愛する妻」を強調したが、確かに他の政治家と異なり、離婚や再婚、不倫疑惑もない。フィヨン氏と予備選で公認候補を争ったニコラ・サルコジ前大統領は任期中に離婚し、カーラ夫人とは3 度目の結婚だ。アラン・ジュペ元首相も再婚組だ。フランソワ・オランド大統領に至っては2 人の元同居人がおり、今は女優のジュリー・ガイエと半同居中だ。ところが、こうした「私生活」が政治生命を脅かすことにはならない。

 一方、金銭スキャンダルが致命傷になったケースは多い。74 年の大統領選で本命だったドゴール派のジャック・シャバンデルマスが中道右派のヴァレリー・ジスカールデスタンに敗れたのは微々たる額の脱税だった。ジスカールデスタン氏は81 年の大統領選で中央アフリカの独裁者ジャン=ベデル・ボカサからの30 カラットのダイヤモンドの贈呈疑惑でフランソワ・ミッテランに敗退した。そのミッテランは隠し子や末期ガンを隠していたが、バレても辞任に追い込まれることはなかった。ジャック・シラクは大統領時代にパリ市長時代のカラ雇用事件が発覚したが免責特権で不問になり、パリ市の助役だったジュペが身代わりに有罪になり、07 年の大統領選への出馬を諦めた。フィヨン氏の場合、いかなる結果に終わるか──

 

◇初出=『ふらんす』2017年4月号

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著者略歴

  1. 山口昌子(やまぐち・しょうこ)

    産經新聞前パリ支局長。著書『フランス流テロとの戦い方』『パリの福澤諭吉』

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