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中条志穂「イチ推しフランス映画」

2017年4月号 『未来よ こんにちは』



© 2016 CG Cinéma - Arte France Cinéma - DetailFilm-Rhône - Alpes Cinéma


『未来よ こんにちは』
2017年3月25日(土)よりBunakamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
配給:クレスト・インターナショナル
公式HP : crest-inter.co.jp/mirai

+ Réalisatrice  Mia Hansen-Løve
+ Nathalie  Isabelle Huppert
+ Heinz  André Marcon
+ Fabien  Roman Kolinka
 

 フランスを代表する女優イザベル・ユペールが主演し、ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞して話題を呼んだ作品。

 パリの高校で哲学教師をつとめる50 代後半のナタリーは、同じ哲学教師の夫と穏やかな生活を営んでいた。だが、老いた母親イヴェットから昼夜を問わず呼び出され、ナタリーは母親の相手をすることが限界になっていた。そんな矢先、夫が別に好きな女性ができたので離婚したいと言い出す。ナタリーは、一生を共にすると思っていた夫の言葉に呆然とするが、気持ちを切り替えようとして、別荘の整理をしたり、母親を施設に入居させる手続きを進めたりする。そして、元教え子でとりわけ目をかけていた青年ファビアンが仲間と暮らすアルプスの山へ遊びに行く。しかし、同じ思想を持っていたはずのファビアンと微妙なずれを感じさせられて、パリに戻る。だが、徐々に一人の生活にも慣れ、人生を楽しむ前向きな気持ちになっていく。そんなおり、母親が亡くなったという知らせが入る……。

 エリック・ロメールの後継者とも評される女性監督ミア・ハンセン= ラブが、四季のうつろいとともに、孤独と自由を受け入れてゆくヒロインのたくましさを描いた力作である。

 

【シネマひとりごと】

 63 歳のイザベル・ユペールはこの映画で50 代後半の女性を演じているが、驚異的な若さだ。フランスには彼女のほかにもサビーヌ・アゼマやカトリーヌ・フロなど、還暦を過ぎても年齢を感じさせない女優がゴロゴロいる。ミニスカートや水着姿も違和感なく見られる羨ましい女優たちだが、今回ユペールよりさらに驚かされたのは、ヒロインの母親を演じたエディット・スコブだ。彼女は今年80 歳を迎える。むかしモデルだったという設定で、銀髪のおかっぱ頭、シルバーのスリップに高級ブランド、バルバラ・ビュイの斬新なジャケットをはおる姿も往年の美少女エディット・スコブだからこそ。彼女を知らないという若い読者の方々にまずおすすめしたいのが、ジョルジュ・フランジュ監督の『顔のない眼』である。この映画の彼女の美しく怖ろしい姿に衝撃を受けた後は、ぜひレオス・カラックス監督の『ホーリー・モーターズ』をご覧いただきたい。車体の長いリムジンを操る運転手に扮したスコブのかっこよさときたらまるで夢のようだ。173 センチの彼女の長身を生かした素晴らしい役柄には、カラックス監督のスコブに対する深い敬意が感じられる。そして、このうえなく上品な容姿のスコブに、役柄上のセリフとはいえ、テレビに映ったサルコジ元大統領を「下品な顔」と言わしめたミア・ハンセン= ラブ監督、その皮肉の切れ味は、なるほど、「意地悪爺さん」と呼ばれるロメールの後継者にふさわしいものかもしれない。

 

◇初出=『ふらんす』2017年4月号

◎『ふらんす』2017年4月号に抜粋対訳シナリオを掲載しています。

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著者略歴

  1. 中条志穂(ちゅうじょう・しほ)

    翻訳家。共訳書コクトー『恐るべき子供たち』、ジッド『狭き門』

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