伴野文夫さん新刊『エマニュエル・マクロン フランスが生んだ革命児』(幻冬舎)
2017年11月07日
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9月に発売された『エマニュエル・マクロン フランスが生んだ革命児』(幻冬舎、1000円+税)の著者・伴野文夫さんに、同書についてご寄稿いただきました。

「彼は地球を守る救世主か?」
伴野文夫


 3年前、36歳のマクロンがオランド政権の内閣改造で経済相に任命されて間もなく、フランスの週刊誌が実施した大統領候補の世論調査で、1位のジュペ元首相など大物3名につづく4位に社会党のマクロンが入った。当時はまだはじめて見る名前で、フランスに時に現れる若き俊英ではないか、ひょっとして大統領になる器かも、という予感にとらわれた。

 以後、マクロンの動静には特別の注意を払ってきたが、まだ若すぎる、もう一つ次の選挙だろうと考えていた。しかしマクロンは2016年11月、大統領選への立候補を宣言。同時に自身の政治哲学を展開した著書『革命Révolution』を刊行した(本書巻末にその要約を収録)。

 ゼロからの出発だったが、半年で支持率レースのトップに立ち、ついに第1回投票で、社会党と共和党という既成の二大政党を一蹴。決選投票でマスコミが大騒ぎした極右のルペン候補も退けた。

 本書の第1章では、25歳年上の夫人とともに、フランスという大国の頂点に上り詰めた奇蹟をたどる。第2章「極右ポピュリストと米英メディア」はマクロンが戦う内外の敵対的勢力を取り上げた。EU 崩壊説をしきりに流すアングロサクソン・メディアとそれをコピーする日本のメディアに言及する。

 第3章「仏独同盟の新時代」は本書の核心の部分である。マクロンは9月の総選挙で第一党を確保したメルケル首相と同盟を固め、箍たがが緩んできたEUの立て直しをはかる。マクロンはそのためにはまず、フランスが元気にならなければならないとはっぱをかける。フランスが奮い立つチャンスだ。第4章は、米英のマネー資本主義が行き詰まるなかで、EUが頼みにする市場はアジアであり、とくに中国であることに触れる。中国が提唱する「一帯一路」の交易は、現代のシルクロード、東西を結ぶ注目すべき経済活動地域だ。第5章では、日本もマクロン革命にならい、もたれかかってきたアングロサクソン世界からの自立をはかることを提言する。

 マクロン革命はフランスだけの革命ではない。2025年までに17基の原子炉を廃止する、2040年にはガソリン自動車の販売を停止すると発表し、トランプの地球破壊に対決する文明改革を呼びかけている。日本も呼応することは、大いに意義のあることだと思う。

(ばんの・ふみお/元NHK 国際経済担当解説委員。著書『ユーロは絶対に崩壊しない』『エマニュエル・マクロン』)

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