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「アクチュアリテ スポーツ」芦立一義

2017年8月号 パリ五輪の可能性

パリ五輪の可能性

 オリンピック東京大会の開催を3 年後に控え、新設される競技種目や期待のアスリートの話題で賑わう一方、運営に関しては地方自治体の費用負担をめぐる問題などの懸念事項がなかなかすっきりしない。さまざまな問題を抱えたまま開催された前回のリオ大会も記憶に新しいが、東京はもはや成功に向かって前に進むしかないだろう。

 東京の次、2024 年の開催都市は、9月13 日にペルーのリマで行なわれるIOC 総会で決定する。候補に残っているのは、近代オリンピックが始まって以来最も少ない2 都市で、パリとロサンゼルスである。いずれも過去にオリンピック開催経験があるが、今年3 月にIOC委員長はこの2 都市のそれぞれを2024年と2028 年の開催地としてはどうかと提案した。これは2 つの候補都市を配慮したものというより、オリンピックが求心力を失い候補地が減少していることへの対応策ではないかという見方もある。ロサンゼルスはこの提案に前向きな姿勢だが、パリとしては2028 年の開催地となった場合に2024 年の開催を目指して進めている計画への支障がでることから、あくまで東京から聖火を受け取りたい意向である。これまでパリは、1992 年、2008 年、2012 年大会の開催都市に立候補してきたが、2024 年は前回パリでオリンピックが開催されてからちょうど100 年目であるという意義も加わっており、IOC 委員長の提案がなくても2024年のパリ開催は有力視されている。

 最終決定を前に、まだパリには辞退という選択肢も残っている。同時に、2028 年開催の可能性はないようだ。招致反対派は、開催にあたって莫大な費用がかかるというような経済的な理由から反対するだけでなく、相次ぐドーピング問題や商業化によるオリンピック理念の喪失などについて大会の開催そのものも疑う。オリンピック開催に反対の立場をとるスポーツ批評雑誌Quel sport ? と社会学者、哲学者たちが5 月10 日にリベラシオン紙でパリ招致辞退を呼びかける記事を寄稿しているが、そのなかで予算が約5 倍に膨れ上がってしまった「東京は(開催費用の見積もりが実際には大きく超過する)その一例」として取り上げられている。

 パリのメトロ1 番線は、1900 年に同時開催された万博とオリンピックの会場アクセスのために作られた。現在のトラムは、2012 年の開催地立候補のために設置され、そして2024 年開催のためにも新たなトラム・メトロの路線新設、拡張計画が進んでいる。オリンピック開催のための課税はないとのことだが、少なくともトラム・バスの運賃は毎年確実に値上がりしているのである。

 

◇初出=『ふらんす』2017年8月号

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著者略歴

  1. 芦立一義(あしだて・かずよし)

    パリ第12大学Master2(哲学)修了。仏哲学

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